市街地再開発の対象となった店舗・事務所などのテナントには、民間の建て替え交渉とは異なる法定補償が問題になります。補償は一括の「立ち退き料」だけで決まるものではなく、消滅する借家権の対価に関する補償と、明渡し・移転によって通常生じる損失の補償を分けて確認する必要があります。
とくに事業用テナントでは、内装・設備・在庫の移転、仮店舗の確保、休業期間、顧客や取引先への影響、従業員対応など、営業実態に応じて検討すべき項目が多岐にわたります。提示総額だけで判断せず、算定項目、数量、期間、根拠資料を確認することが重要です。
- 法定再開発か、通常の民間建て替えかを最初に確認します
- 都市再開発法91条の対価補償と97条の通常損失補償は別の制度です
- 移転費・仮店舗費・営業休止補償は、事業実態と資料に基づいて確認します
- 早期退去や定期借家への切替えは、補償との因果関係に影響することがあります
- 補償契約や権利放棄条項に署名する前に、内訳と手続期限を点検します
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
- 1 市街地再開発のテナント補償は民間の立退料と仕組みが異なる
- 2 都市再開発法91条補償と97条補償の違い
- 3 再開発ビルへ戻るか地区外へ移転するかで補償の前提が変わる
- 4 再開発で事業用テナントが確認すべき主な補償項目
- 5 再開発のテナント補償に一律の相場がない理由
- 6 物件調査・営業調査の前に準備したい資料
- 7 補償提示から明渡しまでの一般的な流れ
- 8 提示額を確認・交渉するときのポイント
- 9 明渡期限より前の退去・契約終了には注意が必要
- 10 協議がまとまらないときは収用委員会への裁決申請を検討する
- 11 再開発のテナント補償を弁護士に相談するタイミング
- 12 再開発のテナント補償に関するよくある質問
- 13 まとめ
市街地再開発のテナント補償は民間の立退料と仕組みが異なる
「再開発」という言葉は、法定の市街地再開発事業だけでなく、ビル所有者やデベロッパーが行う民間の建て替えにも使われます。しかし、適用される制度は同じではありません。
都市再開発法に基づく第一種市街地再開発事業では、権利変換計画、明渡請求、損失補償などの法定手続が進みます。これに対し、法定再開発ではない通常の建て替えでは、賃貸借契約、借地借家法上の正当事由、合意交渉が中心となります。
届いた書面に「準備組合」「市街地再開発組合」「事業計画認可」「権利変換計画」「明渡期限」などの記載があるかを確認し、事業の段階と施行者を特定してください。通常の民間賃貸借における補償は、テナントの立退料と請求できる費目で解説しています。
この記事では、主に第一種市街地再開発事業で店舗・事務所・営業所等を借りている事業用テナントの補償を扱います。土地・建物所有者や借地権者の従前資産評価は別の論点です。
都市再開発法91条補償と97条補償の違い
市街地再開発でテナントが受ける補償を検討するときは、91条補償と97条補償を混同しないことが出発点です。両者は対象と目的が異なり、一方の金額だけを見ても全体の補償が妥当かは判断できません。
| 区分 | 主な目的 | テナントとの関係 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 91条補償 | 権利変換期日に失う権利の対価を補償する | 再開発ビルの借家権を与えられず、従前の借家権が消滅する場合に問題となる | 借家権に客観的な経済価値があるか。金額が当然に発生するわけではない |
| 97条補償 | 土地・物件の明渡しや移転によって通常受ける損失を補償する | 地区外へ移る場合だけでなく、再開発ビルへ戻るため一時移転する場合にも問題となる | 動産、設備、仮店舗、家賃差額、営業休止、移転雑費などの項目と算定根拠 |
91条補償が0円でも97条補償まで0円とは限らない
東京高裁平成27年11月19日判決は、地区外転出を選んだ借家人について、近隣で同種借家権の取引価格が成立していると認める証拠がないなどとして、91条補償の借家権価額を0円とした判断を維持しました。一方、その事案では、97条補償として家賃差額や敷金の運用益損失相当額を含む借家人補償金が支払われていました。
この裁判例から分かるのは、「地区外転出なら借家権価格が必ず支払われる」というわけではないことと、91条の借家権価額と97条の移転・営業上の損失は別に検討すべきことです。91条補償が低い、又は0円であることだけを理由に、移転費や営業補償まで諦める必要はありません。
提示書に「借家人補償」「営業補償」「動産移転料」など複数の項目があるときは、どの法的根拠・補償基準に基づく項目かを分けて確認してください。
土地・建物所有者や借地権者の権利床、地区外転出、従前資産評価については、市街地再開発の権利変換と従前資産評価を参照してください。
再開発ビルへ戻るか地区外へ移転するかで補償の前提が変わる
事業用テナントは、再開発ビルへの再入居を予定するのか、地区外へ移転して営業を続けるのか、廃業するのかによって、必要な移転工程と損失の内容が変わります。補償額だけでなく、営業継続の実現可能性を含めて選択する必要があります。
| 選択肢 | 主な負担・リスク | 補償確認の重点 |
|---|---|---|
| 再開発ビルへ戻る | 仮店舗への移転と再入居の二度の移転、長期の仮営業、新しい賃貸条件、工期変更 | 二度の移転費、仮店舗の内装・設備、仮店舗での収益減、仮営業期間、再入居準備 |
| 地区外へ移転する | 現在地の顧客基盤を失う可能性、新店舗の取得費用、恒久移転後の営業回復 | 借家人補償、恒久移転費、家賃差額、顧客・取引先喪失、開店準備 |
| 廃業する | 事業継続を断念することによる損失、従業員・在庫・契約の整理 | 営業廃止の必要性、事業の収益性、移転可能性、設備・在庫の処分、解雇予告等 |
再入居後の賃料、区画、面積、引渡時期などが確定していない段階では、仮店舗の期間や費用も変動します。施行者の予定工程だけでなく、許認可、内装工事、設備調整、試運転、従業員研修など、実際に営業再開できるまでの工程を組み立ててください。
再入居を選んでも従前と同じ賃料・面積・場所が当然に確保されるとは限りません。地区外移転を選んでも、91条補償が必ず高額になるわけではありません。条件を一覧化して比較することが重要です。
再開発で事業用テナントが確認すべき主な補償項目
97条補償の具体的な項目は、各事業の補償基準や個別事情によって異なります。次の項目が常に全額認められるわけではありませんが、算定書に計上されているか、数量・単価・期間が実態に合っているかを確認するための基本項目になります。
動産移転料・保管費
商品、原材料、什器、机、棚、書類、パソコン、厨房器具などを運搬する費用です。移転先の完成時期が合わず、一時保管が必要になる場合は、搬出・保管・再搬入の工程も検討します。
- 数量:在庫表、固定資産台帳、写真、現地調査結果と一致しているか
- 運搬条件:重量物、精密機器、冷蔵・冷凍品、危険物などの特殊条件が反映されているか
- 移転回数:仮店舗を経由する場合に二度の運搬が必要か
- 保管期間:工期や内装工事期間に対応しているか
内装・造作・機械設備・看板等の移転又は補償
テナントが設置した間仕切り、厨房、空調、給排水、電気設備、製造機械、看板、通信設備などは、所有者と移転可能性を確認します。賃貸人が所有するもの、リース物件、テナントが所有するものを混同すると、補償漏れや二重計上の問題が生じます。
移設して再利用できるか、撤去して新設する必要があるか、移設後の性能保証が可能かを、メーカーや施工業者の見積書で具体化してください。帳簿上の残存価額だけで、実際の移転・再設置費用が把握できるとは限りません。
仮店舗・仮事務所と家賃差額
一時移転をする場合は、仮店舗の賃料、敷金等、仲介費用、内装工事、原状回復、看板、引越しなどが問題になります。恒久移転の場合も、従前賃料と移転先賃料との差額、移転先を確保するための費用が検討対象になることがあります。
ただし、希望する高額物件との差額がそのまま補償されるわけではありません。従前店舗と移転先候補の面積、立地、用途、設備、契約条件を比較し、営業継続に必要な条件を説明する必要があります。
営業休止補償
移転準備、搬出入、内装工事、設備の据付け、試運転、許認可手続などにより営業を休止する期間が生じる場合は、休止期間中の収益減や継続して負担する固定費などが問題になります。一般に、営業利益だけでなく、休業中も支出が続く賃料、保険料、リース料、従業員への休業手当等を項目ごとに確認します。
補償期間は、施行者が想定した標準期間と、実際の営業再開工程が一致するかが重要です。工事業者の見積工程、設備の納期、保健所・消防・業法上の許認可、試運転期間などを資料化してください。
仮営業所での収益減少・顧客や取引先の喪失
仮店舗の立地、面積、視認性、客席数、駐車場、物流動線などが従前より劣ると、営業を継続していても売上が落ちることがあります。来店型店舗だけでなく、医療機関、教育施設、倉庫、製造業などでも、顧客・患者・生徒・取引先の移動や設備能力の低下が問題になります。
抽象的に「売上が落ちる」と主張するだけでは足りません。月次売上、曜日・時間帯別売上、客数、客単価、商圏、予約状況、取引先別売上などから、移転との関係と減少見込みを説明します。
営業廃止補償
移転先が見つからない、許認可や設備上の制約から同種営業を継続できないなど、客観的に営業継続が困難な場合には、営業廃止補償が問題となることがあります。ただし、単に廃業を希望したというだけで認められるものではなく、移転可能性、事業の収益性、経営者の事情、代替地の有無などが厳しく検討されます。
移転雑費・各種手続費用
移転先調査、交通費、通信・広告、住所変更、印刷物、ウェブサイト修正、許認可変更、取引先への通知などの費用です。項目ごとに補償基準上の定額又は実費相当の扱いが異なるため、実際に必要な作業を一覧にして照合します。
再開発のテナント補償に一律の相場がない理由
再開発のテナント補償は、「賃料の何か月分」といった一つの相場で決まるものではありません。民間の立退料交渉とは異なり、法定の損失補償として、移転・営業上の損失を項目別に積み上げることが基本になります。
- 業種:飲食、小売、事務所、医療、製造、倉庫などで移転工程が異なる
- 設備:厨房、製造機械、医療機器、特殊空調等の移設可否と費用が異なる
- 立地依存性:駅前、商店街、特定顧客への近接性など営業場所への依存度が異なる
- 移転方式:地区外移転か、仮店舗を経て再入居するかで移転回数が異なる
- 補償期間:工期、内装、設備納期、許認可、営業回復に必要な期間が異なる
- 権利関係:造作・設備の所有者、リース契約、転貸、共同営業などが異なる
施行者は事業ごとの補償基準や調査結果に基づいて金額を提示しますが、基準を機械的に当てはめた結果が、その店舗に通常生じる損失を正確に反映しているとは限りません。総額の大小ではなく、算定前提の適否を項目別に検討することが増額・是正交渉の中心です。
物件調査・営業調査の前に準備したい資料
補償額は、施行者側の調査だけでなく、テナントが示す資料によっても前提が変わります。移転前の状態を後から再現することは難しいため、調査段階から証拠を残してください。
| 資料区分 | 具体例 | 確認する目的 |
|---|---|---|
| 契約・権利関係 | 賃貸借契約書、更新契約、覚書、敷金・保証金資料、転貸承諾、リース契約 | 占有範囲、契約条件、造作・設備の所有者、原状回復義務を確認する |
| 店舗・設備 | 平面図、設備図、写真・動画、固定資産台帳、購入契約、修理記録、メーカー資料 | 数量、仕様、移設可否、再設置費、性能回復に必要な工程を示す |
| 営業実績 | 決算書、確定申告書、総勘定元帳、試算表、月次売上、部門別・店舗別資料 | 収益、固定費、季節変動、移転前の営業実態を示す |
| 人員 | 従業員名簿、賃金台帳、勤務表、雇用契約、社会保険資料 | 休業中の人件費、配置転換、再開準備に必要な人員を示す |
| 顧客・取引 | 客数、予約、会員、取引先別売上、配送範囲、商圏資料 | 立地依存性、顧客喪失、仮店舗での収益減少を説明する |
| 移転計画 | 候補物件資料、複数の見積書、工程表、許認可照会、設備納期 | 必要な移転費と補償期間が現実的であることを示す |
決算書だけでなく月次資料を用意する
年次の決算書だけでは、繁忙期・閑散期、移転時期の影響、特定店舗の実績が見えにくいことがあります。直近数年分の決算・申告資料に加え、月次試算表、売上台帳、客数、予約数、店舗別損益などを準備すると、補償期間と営業損失の説明がしやすくなります。
写真と動画で現況を残す
内装、設備、配線、配管、看板、倉庫、在庫、搬出経路を、全景と型番が分かる近接写真の両方で記録します。調査図面や物件調書に記載されていない設備があれば、署名前に追記又は異議を文書で示してください。
設備や造作を先に撤去すると、数量、仕様、設置状況、移設可能性を立証しにくくなります。やむを得ず処分するときは、写真、見積書、廃棄証明、型番資料を保存してください。
補償提示から明渡しまでの一般的な流れ
事業や施行者によって細部は異なりますが、事業用テナントの補償はおおむね次の順序で進みます。各段階で「事業の予定」と「テナントが同意した内容」を区別して記録してください。
- 事業と権利関係を確認する:施行者、事業計画、権利変換の段階、賃貸人との関係、再入居又は地区外移転の希望を整理します。
- 物件・営業調査を受ける:占有範囲、設備、造作、在庫、従業員、売上、固定費などを調査します。
- 補償項目と算定書の提示を受ける:総額だけでなく、項目、数量、単価、期間、控除、補償基準を確認します。
- 不足資料と反対資料を提出する:見積書、工程表、月次資料、許認可資料等により前提の修正を求めます。
- 施行者と協議する:移転時期、支払時期、仮店舗、再入居条件、追加費用の扱いを文書で詰めます。
- 補償契約・支払・明渡しへ進む:権利放棄、清算、追加請求の扱いを確認してから署名します。
- 協議が整わなければ裁決等を検討する:収用委員会への裁決申請や、その後の補償額に関する訴えを期限内に検討します。
都市再開発法97条の補償金は、明渡期限までの支払が予定されています。協議が成立しない場合でも、施行者側が所定の手続で金額を定めて支払又は供託を進めることがあります。金銭を受領したことの法的意味は、補償契約、受領書、異議留保、清算条項の記載によって異なるため、書面を確認せずに署名しないでください。
「本件に関する一切の請求を放棄する」「異議なく受領する」「追加費用は請求しない」といった文言がある場合は、未確定の損失や工期延長への対応も含めて確認が必要です。
提示額を確認・交渉するときのポイント
算定書と物件調書を項目ごとに照合する
補償総額が大きく見えても、設備の数量が不足していたり、仮店舗の期間が短かったりすれば、実際の移転費用を賄えないことがあります。算定書の項目を、物件調書、図面、写真、見積書と一行ずつ照合してください。
移転工程から補償期間を逆算する
補償期間は、単なる引越し日数ではありません。候補物件の選定、賃貸借契約、設計、許認可、内装、設備据付け、検査、試運転、開店準備までを工程表にして、営業休止又は仮営業の期間を説明します。
標準的な移転方法で営業を再開できるかを検証する
施行者が想定する移転方法で、従前と同程度の営業が実際にできるかを検討します。床荷重、電力、排気、給排水、搬入路、営業時間制限、用途制限、駐車場、騒音規制などが合わなければ、候補地が存在しても代替性がない場合があります。
営業損失と再開発との因果関係を資料化する
売上減少が再開発による移転・明渡しから通常生じるものか、それとも景気、競合店、経営判断、他店舗への事業移管など別の原因によるものかが問題になります。月次推移、移転前後の客数、通知時期、意思決定の経緯を残し、因果関係を説明できるようにします。
口頭説明を文書に残す
担当者から「後で追加する」「仮店舗は用意する」「工期が延びたら対応する」と説明されても、口頭のままでは内容が不明確です。質問書、議事録、メールなどで、誰が、いつ、どの条件で説明したかを記録してください。
明渡期限より前の退去・契約終了には注意が必要
再開発の予定が示されると、テナントが事業継続を優先して早めに移転したり、賃貸人から定期借家への切替えを求められたりすることがあります。しかし、正式な明渡しよりかなり前に自主的に退去すると、後に発生した損失が再開発によるものか、独自の経営判断によるものかが争われる可能性があります。
東京地裁平成29年5月30日判決は、建物所有者が求めた家賃損失の事案です。従前の賃借人が明渡期限の約2年6か月前に解約通知をし、約2年前に契約が終了していたことや、不確定な事業日程に左右されず本社移転を確実に行うという経営判断が主な理由であったことなどから、明渡期限までの賃料差額を97条の「通常受ける損失」とは認めませんでした。
この判決はテナント自身の営業補償を直接判断したものではありませんが、補償では時期と因果関係が重視されることを示しています。早期移転が必要な場合は、施行者や賃貸人からの要請、事業日程、移転の必要性、損失軽減のための行動であることを文書に残し、補償上の扱いを確認してから契約終了や移転を進めてください。
必要性や因果関係は個別事情で判断されます。重要なのは、移転の理由、正式手続との関係、施行者との協議内容を後から説明できるようにすることです。
協議がまとまらないときは収用委員会への裁決申請を検討する
97条補償の額について施行者との協議が成立しないときは、収用委員会への裁決申請が問題になります。裁決申請では、損失の事実、補償額の見積りと内訳、協議の経過などを具体的に示す必要があります。
東京都収用委員会は、第一種市街地再開発事業の損失補償について、施行者と損失を受けた者のいずれからも裁決を申請できる旨を案内し、申請書式と記載例を公開しています。事業地が東京都以外の場合は、該当する都道府県の収用委員会に確認してください。参考:第一種市街地再開発事業の資産価額等についての申請
- 補償算定書と施行者の調査資料
- テナント側の補償見積りと項目別内訳
- 設備・造作・在庫の資料と専門業者の見積書
- 決算書、月次資料、賃金台帳、固定費資料
- 移転候補地、工程、許認可、営業再開時期の資料
- 施行者への質問書、回答書、協議議事録、メール
裁決申請をしても、事業や明渡しが当然に停止するわけではありません。また、裁決額に不服がある場合の訴えにも期間制限があります。裁決書や通知を受け取った日を記録し、移転準備と争い方を並行して検討する必要があります。
再開発のテナント補償を弁護士に相談するタイミング
補償額が提示された後だけでなく、物件調査、早期退去、定期借家への切替え、地区外転出の選択など、金額の前提が決まる前に相談する方が対応の幅を確保しやすくなります。
- 準備組合・再開発組合から最初の説明を受けたとき:法定再開発か、現在の手続段階と期限を整理します。
- 物件調書や調査確認書への署名を求められたとき:設備・造作・占有範囲の漏れを確認します。
- 早期退去や定期借家への切替えを求められたとき:補償との因果関係と権利への影響を検討します。
- 補償算定書が提示されたとき:項目、数量、単価、期間、控除、根拠資料を検証します。
- 補償契約・明渡合意への署名を求められたとき:清算条項、権利放棄、追加請求の扱いを確認します。
- 収用委員会や裁判所から書類が届いたとき:期間制限と提出資料を直ちに確認します。
設備や営業損失の評価では、弁護士だけでなく、税理士、公認会計士、不動産鑑定士、建築・設備の専門家、補償コンサルタント等の知見が必要になることがあります。争点を整理し、どの専門家の資料が必要かを早い段階で決めることが重要です。
再開発のテナント補償に関するよくある質問
再開発組合から退去を求められたら、すぐに明け渡す必要がありますか
説明や要請を受けた段階で直ちに明け渡すとは限りません。法定手続の段階、正式な明渡請求と期限、賃貸借契約の状況を確認してください。ただし、通知を放置すると資料準備や不服手続が間に合わなくなるため、書面の受領日を記録して早めに対応します。
91条補償が0円なら、テナントは補償を受けられないのですか
そうとは限りません。91条補償は消滅する借家権の対価に関するもので、97条補償は明渡し・移転によって通常生じる損失に関するものです。借家権価額が0円と評価されても、動産移転、家賃差額、仮店舗、営業休止などを別に検討します。
補償額を増やすには何を提出すべきですか
単に希望額を伝えるのではなく、争う項目ごとに資料を提出します。設備の見積書、移転工程、候補物件、月次売上、固定費、賃金台帳、許認可の所要期間、顧客・商圏資料などから、施行者の前提と異なる点を説明してください。
早く移転すれば、その期間の損失もすべて補償されますか
早期移転が必要であった理由と再開発との因果関係によります。自主的な経営判断と評価されると、正式な明渡期限前の損失が補償対象外になることがあります。移転前に施行者との協議内容を文書化し、補償上の扱いを確認してください。
提示された金額を受け取りながら増額を争えますか
受領自体と追加請求の可否は、補償契約、受領書、供託、異議留保、清算条項によって結論が変わります。「一切の請求をしない」といった条項に署名する前に、未争額の受領方法と残額を争う手続を確認してください。
営業補償の資料は何年分必要ですか
事業や争点によりますが、直近数年分の決算書・申告書に加え、月次試算表や売上台帳を用意すると説明しやすくなります。季節変動、臨時休業、店舗別損益がある場合は、年次資料だけでなく月次・部門別資料を準備してください。
まとめ
市街地再開発における店舗・テナントの補償は、民間の立退料と同じ発想で総額だけを比べるものではありません。91条の権利の対価と、97条の明渡し・移転による通常損失を分け、営業実態に即して項目ごとに検証する必要があります。
- 法定再開発か通常の民間建て替えかを確認する
- 91条補償と97条補償を分けて算定内訳を確認する
- 設備・造作・仮店舗・営業休止・顧客喪失を資料化する
- 早期退去や契約変更は補償との因果関係を確認してから進める
- 補償契約、裁決申請、訴訟の期限と権利放棄条項に注意する
補償交渉では、移転後に実損が判明してからでは証拠が不足することがあります。現況写真、物件調書、決算・月次資料、見積書、工程表を早い段階でそろえ、提示前から損失項目を整理してください。
坂尾陽弁護士
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