残地補償とは?価格低下・利用価値減少・残地工事・残地収用を解説

残地補償とは、公共事業のために一団の土地の一部だけが取得・収用され、残った土地の価格や利用価値が低下したときに、その損失を補償する制度です。

道路拡張で敷地の前面が削られた結果、土地が三角形になる、間口や奥行が不足する、接道や高低差の条件が悪化する、駐車や車両の出入りが難しくなるといった場合が典型です。ただし、土地が狭くなれば自動的に一定割合の残地補償が支払われるわけではありません。取得前と取得後の土地を同じ利用目的・同じ評価条件で比較し、どの機能が失われ、その結果としていくら価格が下がるのかを具体的に示す必要があります。

また、残地の問題には、価格低下を補う「残地補償」、通路・擁壁・盛土等の費用を補う「残地工事費」、残地全体の収用を求める「残地収用」があります。似た言葉ですが、要件と効果は異なります。

  • 残地補償は、残った土地の価格低下・利用価値減少などを対象とします
  • 残地工事費は、通路・みぞ・柵・擁壁・盛土・切土等の機能回復費を対象とします
  • 残地収用は、従来の目的に利用することが著しく困難な場合に残地全体の収用を求める制度です
  • 不整形、間口・奥行、接道、高低差、分断、駐車・車両動線等を収用前後の図面で比較します
  • 土地の減価と営業上の損失を区分し、同じ損失を二重に計上しないことが重要です

坂尾陽弁護士

残地補償は「残った面積」だけでは判断できません。取得前後の配置図、道路断面図、高低差、建物・駐車場・車両動線を重ね、失われる土地機能を見える形にすることが出発点です。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

 

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残地補償とは?土地収用法74条の基本

土地収用法74条は、同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用又は使用することによって、残地の価格が減少し、その他残地に関して損失が生じるときは、その損失を補償すると定めています。

ここでいう「残地」は、公共事業に必要な部分を除いた後に残る土地です。登記上の一筆だけで判断するのではなく、同じ所有者のもとで住宅敷地、店舗敷地、工場敷地、農地等として一体利用されていた範囲が問題になります。複数筆でも一体利用されていれば一団の土地として評価されることがあり、逆に同じ筆でも利用状況が明確に分かれていれば、その実態を確認する必要があります。

残地に関する4つの制度を区別する

制度 主な根拠 対象・効果
残地補償 土地収用法74条 残地の価格低下、利用価値減少その他の損失を金銭で補償
残地工事費 土地収用法75条 通路、みぞ、かき、さく等の工作物や盛土・切土に通常必要な費用を補償
残地収用 土地収用法76条 従来の目的に利用することが著しく困難な場合に残地全部の収用を請求
工事の代行 土地収用法84条 一定の工事費補償に代えて起業者が工事を行うよう要求する仕組み

たとえば、道路拡張後も住宅敷地として利用できるものの、不整形化によって市場価値が下がる場合は残地補償が中心です。道路との高低差を解消するために進入路や盛土が必要なら残地工事費が問題になります。残地が極端に狭く、住宅敷地として使うこと自体が著しく困難なら残地収用を検討します。

残地補償と土地代は別項目です

取得される部分には土地の対価補償が行われます。残地補償は、取得されずに残る部分に生じる別の損失を対象とするため、取得面積の土地代に自動的に含まれるものではありません。

隣接地の損失とは区別する

土地の一部が取得されず、単に道路や公共施設の隣地になっただけの土地は、通常、土地収用法74条の「残地」ではありません。騒音、振動、日照、排気、交通量増加などが問題となる場合は、道路法その他の法令や事業損失の取扱いを別に検討します。

もっとも、土地の一部取得と道路構造の変更が一体となって、残地の接道・高低差・形状等を直接悪化させた場合は、残地補償又は残地工事費の問題となり得ます。道路供用後の一般的な環境影響を、当然に全て残地補償へ入れることはできません。


残地の価格低下・利用価値減少が認められやすい場面

残地補償では、残地の面積だけでなく、取得前の土地が持っていた機能がどの程度維持されるかを検討します。主な判断要素は次のとおりです。

判断要素 典型的な影響 確認資料
面積 建築、増築、分割、資材置場、農作業等に必要な面積が不足する 収用前後の面積表、建築計画、利用実績
形状 三角形、細長い土地、屈曲した土地となり有効利用部分が減る 求積図、現況測量図、画地計算
間口・奥行 建物配置、採光、車両進入、荷役、避難動線等に支障が出る 配置図、車両軌跡図、建築士意見
接道条件 接道幅が狭くなる、従来の出入口を失う、道路種別が変わる 道路台帳、道路断面図、接道状況写真
高低差 道路と敷地の段差が拡大し、車両・歩行者の出入りが困難になる 縦横断図、レベル測量、造成計画
分断 道路や水路により土地が分かれ、一体利用できなくなる 事業計画図、動線図、利用計画
駐車・旋回 必要台数、転回、荷下ろし、来客動線が確保できなくなる 駐車配置図、車種寸法、利用記録
法令上の利用 建ぺい率・容積率だけでなく、接道、斜線、条例、開発許可等との関係で利用が制約される 用途地域図、法令調査、行政照会

「何平方メートル以下なら補償」という一律基準はない

残地が小さくても、隣接地と一体利用できる、駐車場や庭として合理的に使える、従来用途が維持できる場合には、大きな減価が認められないことがあります。反対に、面積が相当残っていても、間口が失われる、奥行が浅くなる、大型車の進入ができないなど、用途に決定的な支障が生じれば価格低下が問題になります。

したがって、「残地が100平方メートル未満だから買い取られる」「間口が2メートル減ったから何%減価する」といった一般化はできません。地域の市場、従前用途、最有効使用、法令制限、代替動線、工事による機能回復の可否を総合して判断します。

現在の利用だけでなく合理的な利用可能性も確認する

空地や月極駐車場であっても、将来の住宅・店舗・工場用地としての合理的な利用可能性が価格形成に影響することがあります。他方、実現可能性の低い大規模開発や、法令上困難な計画を前提に減価を主張しても認められにくいでしょう。

不動産鑑定では、地域の標準的な画地と残地を比較し、形状、接道、規模、高低差等の個別格差を検討します。所有者の主観的な使いにくさだけでなく、市場参加者が残地をどう評価するかが重要です。


残地補償の計算方法と評価時点

残地補償の考え方は、単純化すると、一部取得がなかったと仮定した残地相当部分の価値と、一部取得後の実際の残地価値との差を把握することです。さらに、売却を急ぐ必要がある場合の損失など、基準上認められる「その他残地に関する損失」が問題になることもあります。

もっとも、実務上は、標準地又は比較対象となる画地を設定し、地域要因・個別要因を比較しながら単価を求めます。「取得前の坪単価に残地面積を掛け、任意の減価率を乗じる」というだけでは足りません。

  • 取得前の一団の土地を特定する
    所有者、使用者、用途、利用目的が一体であった範囲を図面と現況から確認します。
  • 取得前の画地条件を整理する
    面積、形状、間口、奥行、接道、高低差、法令制限、利用状況を記録します。
  • 取得後の残地条件を整理する
    道路完成後の高さ、出入口、擁壁、歩道、中央分離帯、車両動線等も含めて比較します。
  • 残地工事後の状態を区別する
    通路・盛土等で機能回復する部分と、工事後も残る価格低下を分けます。
  • 市場性の低下を評価する
    不整形、規模、接道等が取引価格・賃料・売却期間に与える影響を鑑定資料で示します。

補償項目ごとに基準時が同じとは限らない

収用対象土地の価格は土地収用法71条の評価方法が問題となる一方、残地補償などの損失補償には同法73条の算定時期の原則が関係します。任意買収では、公共用地の取得に伴う損失補償基準等に基づく契約時点の取扱いが問題になります。

このため、起業者の算定書では、評価時点、採用単価、時点修正、個別格差、残地工事を実施した後の状態を前提としているかを確認してください。取得土地の単価と残地の評価条件を混同すると、差額の理由が見えなくなります。

減価率だけを先に決めないでください

裁判例に現れる減価率は、特定の土地形状・地域・評価資料に対する結論です。「裁判例が24%だから自分の土地も24%」という計算はできません。まず収用前後の条件差と市場資料を整理します。


残地工事費の補償|通路・擁壁・盛土・切土

土地収用法75条は、一団の土地の一部が収用又は使用されたため、残地に通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の新築・改築・増築・修繕又は盛土・切土が必要となるとき、その費用を補償すると定めています。

残地工事費は、土地所有者が望む設備を自由に新設する費用ではありません。従前の用法による利用を維持するために、客観的に通常必要で、工法・規模・単価も相当な工事であることが必要です。

残地工事費の対象となり得る工事

  • 進入路・スロープ・階段
    道路との高低差や出入口変更に対応し、従前の車両・歩行者利用を維持する工事
  • みぞ・排水施設
    道路工事や敷地形状の変更により必要となる排水路、集水設備等の工事
  • かき・さく・塀
    取得により既存境界施設が失われ、従前の利用維持に必要となる再設置
  • 擁壁・土留め
    切土・盛土、高低差の発生により安全な利用を維持するために必要な工事
  • 盛土・切土
    通路だけでは従前利用を維持できず、敷地高さの調整が通常必要となる場合
  • 付随する物件移転
    残地工事に伴い建物、工作物、立木等の移転やかさ上げが必要となる場合

国土交通省の残地工事費補償実施要領は、道路との高低差が生じる場面を中心に、通路・階段、盛土・切土等の機能回復方法を示しています。実際の補償では、残地の規模、用途、建物位置、勾配、安全性、車種等に応じて工法を比較します。

残地補償と残地工事費を二重計上しない

残地工事によって価格低下・利用価値減少が完全に回復するなら、同じ損失についてさらに残地補償を重ねることはできません。反対に、進入路や盛土を施工しても、不整形化、奥行不足、建築可能面積の減少等が残るなら、工事後に残る減価を別途検討します。

状態 整理の方向
工事で従前機能と市場価値が回復する 残地工事費を中心に検討し、同じ減価の重複計上を避ける
工事で利用は可能になるが市場価値低下が残る 合理的工事費と、工事後も残る減価を区分して検討
工事費が過大で、従前用途の維持も困難 残地取得又は残地収用の要件と補償経済性を検討

起業者に工事を行うよう求める方法もある

金銭補償だけでなく、土地収用法84条により、一定の場合には補償の全部又は一部に代えて起業者が工事を行うよう収用委員会に要求できる仕組みがあります。道路本体との接続、施工時期、安全管理、将来の瑕疵対応等を考えると、起業者施工が合理的な場合があります。

ただし、要求の時期・方法には手続上の定めがあります。現金補償と工事代行のどちらが適切かを、設計図、見積り、施工責任、維持管理まで含めて比較してください。


駐車場・接道・車両動線が失われる場合の補償

道路拡張では、敷地前面の取得により駐車台数が減る、出入口が狭くなる、中央分離帯で右折進入できなくなる、歩道の切下げ位置が変わる、大型車が転回できなくなるといった問題が生じます。

これらを「駐車場減少補償」や「接道補償」という一つの固定項目だけで処理するのではなく、損失の性質ごとに分ける必要があります。

損失の内容 主な検討対象 注意点
取得される駐車場部分そのもの 取得土地の価格 残地補償とは別の土地対価
残地の形状・接道悪化による市場価値低下 残地補償 収用前後の画地条件を比較
駐車機能を回復するための工事・借上げ等 残地工事費、自動車保管場所の機能回復 合理的な回復方法と費用を比較
来客減少・物流効率低下による営業上の損失 営業補償又は別の事業損失の検討 土地減価と同じ損失を重ねない

国土交通省の自動車保管場所補償実施要領では、残地内での配置変更、建物移転、近隣駐車場の借上げ、立体化等の機能回復方法を、用途と経済性に応じて検討します。単に失われた台数に月額駐車料金を掛けるのではなく、建物利用に必要な保管場所か、残地内で回復できるか、代替方法が合理的かを確認します。

営業損失との境界を明確にする

店舗や工場では、駐車・車両動線の悪化が土地価格と売上の双方に影響することがあります。土地自体の市場価値低下は残地補償、休業・顧客喪失・物流費増加等は公共事業・用地買収の営業補償として区分します。

同じ事実を二つの補償項目に記載すること自体は問題ではありませんが、最終的に同じ経済的損失を二重に請求しないよう、土地評価上の影響と営業会計上の影響を分けて試算します。

車両軌跡図が有効です

大型車、配送車、来客車両が関係する場合は、車種ごとの全長・幅・最小回転半径を前提に、収用前後の進入・転回・荷役を車両軌跡図で比較すると、単なる不便ではなく機能低下を説明しやすくなります。


残地収用・残地買収を求められる場合

土地収用法76条は、一団の土地の一部を収用することによって、残地を従来利用していた目的に供することが著しく困難となるとき、土地所有者が残地全部の収用を請求できると定めています。

残地収用が認められると、残地の減価分だけでなく、残地そのものが収用対象となります。したがって、単に「使いにくい」「売りにくい」「全部買ってほしい」という希望だけでは足りず、従来用途を維持することが著しく困難であることを資料で示す必要があります。

残地収用の判断で重視される事情

  • 従前用途
    住宅、店舗、工場、倉庫、駐車場、農地等として、どのように一体利用していたか
  • 残地の規模・形状
    建物配置、法令上の敷地要件、作業空間等を満たせるか
  • 接道・高低差
    安全かつ現実的な出入りが可能か、工事による回復が可能か
  • 建物・工作物との関係
    建物を残地へ移転できるか、残存建物を従前どおり利用できるか
  • 代替利用の現実性
    所有者の希望ではなく、客観的・合理的な用途が残るか
  • 工事費と取得費の比較
    機能回復工事をするより残地を取得する方が合理的か

法76条の残地収用と任意の残地買収は別

区分 残地収用 任意の残地買収・残地取得
根拠 土地収用法76条 補償基準・起業者との協議
判断主体 収用委員会 起業者と所有者の合意が基本
中心要件 従来用途に供することが著しく困難 生活再建、利用困難性、工事費との経済比較等を基準に検討
手続 法定の請求・意見書 任意交渉・契約

任意買収の段階では、公共用地補償基準により残地取得が検討される場合がありますが、起業者が希望だけで必ず買い取る制度ではありません。法76条の請求権を行使する場面と、補償基準に基づく任意取得を求める場面を区別してください。

意見書の提出時期を逃さない

残地収用や工事代行等の請求・要求は、土地収用法87条等により意見書で行う必要があり、縦覧期間との関係など手続上の制約があります。残地収用については、一定の場合に縦覧前から収用委員会へ意見書を提出できる特則もあります。

収用委員会の意見書・審理・裁決へ進んでから慌てて用途や図面を準備するのではなく、取得範囲が示された時点で、残地収用を求めるか、工事費・減価を求めるかを検討してください。

契約書で残地請求を清算しないでください

任意買収契約に、残地を含む一切の補償が最終精算済みである旨の条項が入ることがあります。残地の完成形、道路高さ、出入口、工事内容が未確定のまま署名すると、後の追加請求が難しくなるおそれがあります。

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起業利益との相殺禁止と3つの裁判例

道路整備等によって残地が新しい道路に面し、利便性や価格が上がる可能性がある一方、形状・高低差・接道等が悪化することもあります。土地収用法90条は、事業の施行によって残地の価格が増加し、その他利益が生じても、その利益を収用又は使用による損失と相殺してはならないと定めています。

もっとも、価格形成要因の中で利益と損失を明確に分けられない場合に、残地の実際の市場価値をどう評価するかは難しい問題です。裁判例は、事業利益を常に無視する、又は常に差し引くという単純な整理をしていません。

裁判例 判断の要点 実務上の意味
大阪高裁昭和49年9月13日判決 残地に損失がある以上、近傍土地に補償がなく不均衡が生じても、被収用者は残地の損失の補償を受ける地位にあるとした 残地固有の損失を、周辺土地も同様だからという理由だけで否定しない
最高裁昭和55年4月18日判決 旧法下で、事業が残地価格に及ぼす利益と損失を明確に区別できない場合、双方を総合考慮することは相殺禁止に反しないとした 不可分な価格形成要因を評価する場面では、実際の残地価格を総合的に判断することがある
名古屋高裁平成16年9月21日判決 間口約20メートル、最大奥行約9メートルのほぼ三角形の残地について形状劣化を認め、不確実な将来の商業地化や道路接面利益との相殺を否定した 損失と利益を区別でき、利益が不確実なら、具体的な形状減価を優先して評価する

旧法事案を現行法へ機械的に当てはめない

大阪高裁昭和49年9月13日判決と最高裁昭和55年4月18日判決は、土地収用法の旧規定が適用された事案を含みます。現行法では評価時点や補償基準の体系が異なるため、結論だけを切り取って現在の算定へ当てはめることはできません。

一方、三つの裁判例に共通するのは、抽象的な「道路が便利になる」という説明ではなく、残地の実際の形状、接道、利用、価格形成要因を具体的に分ける必要があるという点です。

裁判例の減価率は相場ではありません

名古屋高裁平成16年9月21日判決は事案に即して減価率を判断しましたが、その数値は土地の形状、地域、利用可能性、鑑定内容を前提とするものです。個別土地の減価率は別途鑑定が必要です。


残地補償を交渉するために必要な資料

残地補償の交渉では、感覚的な不便を、図面・数量・費用・価格差へ変換します。次の資料を可能な限り取得してください。

  • 取得範囲図・用地実測図
    取得線、残地面積、辺長、角度、道路境界を確認します。
  • 収用前後の配置図
    建物、駐車場、出入口、擁壁、排水、設備、植栽、荷役場所を重ねます。
  • 道路平面図・縦横断図
    完成後の道路高さ、歩道、切下げ、中央分離帯、交差点、勾配を確認します。
  • 現況写真・動画
    車両進入、駐車、荷役、農作業等の従前利用を移転・工事前に記録します。
  • 法令調査資料
    用途地域、接道、建ぺい率・容積率、開発・農地・条例等の制限を確認します。
  • 不動産鑑定・市場資料
    比較事例、標準画地、個別格差、売却可能性、残地単価を検討します。
  • 工事設計・見積書
    進入路、擁壁、盛土、排水、駐車配置等の複数案と費用を比較します。
  • 営業・利用実績資料
    駐車台数、車種、配送回数、作業範囲等を確認し、営業損失との境界を整理します。

起業者の算定内訳を項目別に確認する

「残地補償なし」「工事費○円」という結論だけでは、どの前提が違うか分かりません。次の事項を書面で確認します。

  • 一団の土地をどの範囲と認定したか
  • 従前用途と取得後用途をどう認定したか
  • 標準画地、比較事例、個別格差率をどう設定したか
  • 道路完成後の高さ、出入口、歩道切下げを前提にしたか
  • 残地工事を実施した後の状態で評価したか
  • 残地補償、工事費、駐車機能、営業補償をどう区分したか
  • 残地取得・残地収用を否定する理由は何か

反対案は一つに決めつけず比較する

たとえば、進入路だけ設ける案、敷地全体を盛土する案、建物配置を変更する案、近隣駐車場を借りる案、残地を取得する案を比較します。各案について、工事費、利用回復の程度、残る減価、施工期間、営業への影響を並べると、合理的な補償方法を選びやすくなります。


残地補償の提示額を見直す手順

  1. 完成後の残地形状を確定する
    取得線だけでなく、道路高さ、歩道、出入口、擁壁等を含む完成図を入手します。
  2. 従前利用を証拠化する
    建物配置、駐車、車両、荷役、農作業、排水等を写真・図面・記録で残します。
  3. 損失を類型別に分ける
    取得土地、残地減価、残地工事、建物・工作物、駐車機能、営業損失を区分します。
  4. 起業者の算定と照合する
    一団の土地、評価時点、比較事例、個別格差、工法、単価、数量の相違を一覧化します。
  5. 専門家による代替案を作る
    不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、土木・交通の専門家等に必要部分を確認します。
  6. 書面で補償案を提出する
    求める項目、金額、計算式、理由、証拠を対応させ、未回答事項を明確にします。
  7. 契約・収用委員会・訴訟を選ぶ
    見込差額、移転時期、費用、手続期限を踏まえて解決方法を判断します。

任意交渉で合意できない場合は、収用委員会で残地補償、工事費、残地収用等を主張します。裁決額に不服がある場合は、土地収用・用地買収の補償額を増額する方法で、補償増額請求訴訟の期限・立証・費用対効果を確認してください。

解体・造成前に証拠を残してください

道路工事や建物移転が進むと、従前の出入口、敷地高さ、駐車・荷役状況を再現できなくなります。現地測量、写真、動画、ドローン画像、車両動線等は、工事前に保存することが重要です。


残地補償を弁護士・専門家に相談するタイミング

残地補償は、法律論だけでなく、不動産評価、測量、建築・土木、交通動線、営業会計が関係します。弁護士は、補償項目と手続を整理し、争点に応じて専門家の意見を組み合わせます。

特に、次の場面では契約前から相談を検討してください。

  • 残地補償は出ないと口頭で説明されたが、理由や評価書が示されない
  • 敷地が三角形・帯状となり、建物配置や将来利用が大きく制限される
  • 道路との高低差、擁壁、歩道切下げ、進入勾配に問題がある
  • 駐車・大型車・荷役の機能が失われ、土地減価と営業損失の双方が関係する
  • 残地工事の設計・見積りが実際の利用車種や建物計画に合わない
  • 残地全部の買収を求めたいが、起業者から拒否されている
  • 収用委員会の縦覧・意見書提出又は裁決後の期限が迫っている
  • 補償契約に追加請求放棄・最終清算条項がある

相談時には、補償内訳書、取得範囲図、道路完成図、登記事項、測量図、建物配置図、現況写真、見積書、起業者との質疑記録を用意すると、必要な調査と見込差額を検討しやすくなります。


残地補償についてよくある質問

どの程度狭くなれば残地補償を受けられますか?

全国一律の面積基準はありません。残地面積、形状、間口・奥行、接道、高低差、法令制限、従前用途、工事による回復可能性を総合して、価格低下又はその他の損失があるかを判断します。面積が小さくても有効利用できれば減価が小さい場合があり、面積が残っていても用途上重要な間口や動線を失えば大きな問題になります。

駐車場が減れば、失った台数分の補償を受けられますか?

台数だけで自動的に決まりません。取得土地の対価、残地の市場価値低下、残地内での配置変更費、近隣駐車場の借上げ等の機能回復、営業上の顧客喪失を区分して検討します。住宅・店舗・工場等の利用に必要な駐車機能か、合理的な回復方法があるかが重要です。

残地も全部買い取ってもらえますか?

従来利用していた目的に供することが著しく困難となる場合は、土地収用法76条の残地収用を請求できる可能性があります。任意交渉でも補償基準に基づく残地取得が検討される場合がありますが、単に売却を希望するだけで当然に買い取られるものではありません。

道路が整備されて便利になる利益は、残地補償から差し引かれますか?

土地収用法90条は起業利益と損失の相殺を禁止しています。ただし、残地価格に対する利益と損失を明確に区別できない場合の評価方法については裁判例上の議論があります。道路接面による利益が具体的か、不確実な将来予測か、形状減価と区別できるかを検討します。

騒音や交通量の増加も残地補償になりますか?

道路供用後の一般的な騒音・振動・排気・交通量増加が、当然に土地収用法74条の残地補償になるわけではありません。土地の一部取得に伴う形状・接道・高低差等の直接的な悪化と、周辺にも及ぶ事業損失を分け、適用法令・基準と因果関係を確認します。

残地工事費を受け取れば残地補償は請求できませんか?

工事によって全ての減価が回復する場合は、同じ損失を重ねて請求できません。しかし、工事後も不整形、奥行不足、建築可能面積の減少、市場性低下等が残るなら、その残存減価を別途検討できます。工事前と工事後の二段階で評価してください。

一度補償契約に署名した後でも追加請求できますか?

契約内容によります。残地を含む一切の補償を最終精算する条項、追加請求放棄、工事内容の合意があると、後の請求が難しくなる可能性があります。他方、契約対象外の損失、前提が大きく異なる工事変更、錯誤等が問題となる場合もあるため、契約書と交渉経過を個別に確認します。


まとめ|残地補償は取得前後の土地機能を資料で比較する

残地補償は、道路拡張等で土地の一部が取得された後、残った土地の価格又は利用価値が低下した場合に、その損失を回復する制度です。面積や一律の減価率ではなく、取得前後の土地条件と合理的な機能回復方法を比較して判断します。

  • 残地補償、残地工事費、残地収用、任意の残地取得を区別する
  • 不整形、間口・奥行、接道、高低差、分断、駐車・車両動線を図面で比較する
  • 工事で回復する損失と、工事後も残る価格低下を分ける
  • 土地減価、駐車機能、営業損失の二重計上を避ける
  • 起業利益との相殺は、利益と損失の区別可能性を踏まえて検討する
  • 契約・解体・造成前に、測量、写真、見積り、鑑定資料を確保する

残地の完成形が分からないまま補償契約へ署名すると、必要な工事や価格低下を見落とすおそれがあります。取得範囲と道路完成図が示された段階で、残地を使い続ける案、工事で回復する案、残地全部の取得を求める案を比較してください。

坂尾陽弁護士

残地問題は、工事が完成してからでは従前状況の立証が難しくなります。土地の一部取得が示されたら、契約前に図面と現地を照合し、残地補償・工事費・残地収用のどの制度を使うべきか整理しましょう。

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