マンション建替えの売渡請求を受けると、反対している区分所有者でも、区分所有権と敷地利用権を「時価」で売り渡す法的手続に入ることがあります。これは通常の立退料交渉ではなく、区分所有法に基づく権利の強制的な売買です。
もっとも、請求書に記載された金額がそのまま確定するわけではありません。建替え決議や催告・回答の手続、売渡請求の行使者と期間、時価の評価方法、代金支払と明渡し・登記の条件を分けて確認する必要があります。
特に催告を受けた段階では、回答期限が進んでいます。参加するか否かを曖昧な条件付きで回答すると、参加回答として扱われないおそれもあるため、受領日、回答内容、配達記録を早急に整理してください。
- 催告を受けた日から2か月以内に参加・不参加を回答します
- 無回答は建替えに参加しない旨の回答とみなされます
- 有効な売渡請求は、承諾しなくても到達により法的効果が生じます
- 時価は、古い住戸の通常の中古価格だけでなく、建替え計画を前提に評価します
- 代金支払と明渡し・移転登記は、原則として同時履行の関係です
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
マンション建替えの売渡請求とは
マンションの建替えは、区分所有者全員の同意がなくても、建物の区分所有等に関する法律に基づく建替え決議が成立すれば進められる場合があります。2026年4月施行の改正後も、建替え決議は原則として区分所有者数と議決権の各5分の4以上が必要で、耐震性不足など一定の客観的事由がある場合には各4分の3以上へ緩和されることがあります。
決議に賛成しなかった区分所有者については、その後の催告により、建替えに参加するか否かを確定します。不参加となった区分所有者に対しては、建替え参加者、買受指定者、又は認可を受けた再生組合が、区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すよう請求できる場合があります。
賃貸住宅の借主が大家から退去を求められる場面では、借地借家法上の正当事由や立退料が問題になります。分譲マンションの区分所有者に対する売渡請求は、所有権等を時価で取得する制度であり、賃料の何か月分という立退料相場では判断しません。
2026年改正後は再生手法が増えている
2026年4月からは、建替えのほか、建物更新、建物・敷地の一括売却、取壊しなど、マンション再生の選択肢が拡充されています。決議の種類によって手続や評価の前提が異なるため、届いた書面が「建替え決議」に基づくものか、別の再生決議に基づくものかを確認してください。
この記事は、主に建替え決議後に不参加者が受ける売渡請求を扱います。参加して権利変換を受けるか、金銭転出や売却を選ぶかという比較は、マンション再生の権利変換・転出・分配金で確認してください。
催告を受けたら2か月以内に回答する
建替え決議が成立すると、集会の招集者は、決議に賛成しなかった区分所有者やその承継人に対し、決議の内容により建替えに参加するか否かを回答するよう、遅滞なく催告します。催告は書面のほか、法定の要件を満たす電磁的方法で行われる場合もあります。
催告は発送日ではなく、相手方に到達した時点で効力が生じます。催告を受けた区分所有者は、到達日から2か月以内に回答しなければなりません。期間内に回答しないと、建替えに参加しない旨を回答したものとみなされます。
| 回答 | 原則的な扱い | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 参加する | 建替え参加者となり、建替え決議の内容により建替えを行う合意があったものと扱われる | 取得予定住戸、追加負担、権利変換、仮住居、融資、撤回の可否 |
| 参加しない | 売渡請求の対象となり得る | 時価、転居時期、抵当権、賃借人、税務、代替住居 |
| 回答しない | 不参加回答とみなされる | 長期不在、相続、共有、郵便未確認でも期限が進む可能性 |
| 条件付き・曖昧な回答 | 参加回答として認められないおそれがある | 条件の内容、回答時点で参加意思が確定しているか |
条件付きの参加回答は危険
東京地裁平成27年1月26日判決は、「建替え決議無効の確定判決を解除条件として参加する」旨の回答について、催告期間満了時に参加するか否かが確定しないとして、参加回答とは認めませんでした。その結果、区分所有者は不参加者に当たり、再生組合による売渡請求が有効と判断されています。
建替え決議の有効性を争うことと、参加回答をどうするかは別に設計する必要があります。「反対である」「訴訟を予定している」と付記するだけでなく、法的効果を踏まえた回答文を期限内に到達させることが重要です。
回答期限内に作成しただけでは足りません。配達証明付き郵便など、いつ相手方に到達したか確認できる方法を検討し、回答書の写し、封筒、追跡記録を保存してください。
売渡請求には行使できる期間がある
区分所有法に基づく売渡請求は、催告に対する2か月の回答期間が満了した翌日から、さらに2か月以内に行使する必要があります。催告の到達日が区分所有者ごとに違えば、回答期間と売渡請求期間も各人で異なります。
また、マンションの再生等の円滑化に関する法律に基づき再生組合から請求される場合は、組合設立認可の公告日と催告回答期間の満了日を基準にした別の期間制限があります。誰が、どの法律に基づき、いつ請求したかを確認してください。
期限を過ぎた請求が当然に有効とは限らない
売渡請求は強い法的効果を持つため、行使者、相手方、対象権利、期間、到達が重要です。請求書の日付だけでなく、催告の到達日、回答期限満了日、売渡請求の発送日と到達日、再生組合の認可公告日を時系列表にして確認します。
ただし、期間経過を指摘すれば必ず請求が無効になるとは限りません。区分所有法上の請求の後に再生組合が別の法的根拠で請求している場合や、相手方が承継人である場合など、書面の経緯全体を確認する必要があります。
有効な売渡請求が届くと承諾なしに売買の効果が生じる
売渡請求権は形成権とされ、適法な意思表示が相手方に到達すると、相手方の承諾がなくても時価による売買契約が成立します。単に「売りたくない」と回答したり、請求書の受取りを拒否したりするだけで、法的効果を止められるとは限りません。
もっとも、請求の有効性や時価に争いがあれば、裁判で争うことができます。争点は、「建替えに反対している」という感情的な問題だけでなく、建替え決議の手続、催告・回答、請求期間、請求者の資格、対象権利、鑑定評価に分けて主張・立証します。
代金支払と明渡し・登記は原則として同時履行
売渡請求をした側は時価相当額を支払う義務を負い、請求を受けた区分所有者は専有部分を引き渡し、区分所有権・敷地利用権等の移転登記手続をする義務を負います。これらは原則として同時履行の関係にあります。
したがって、代金の支払準備がされていないのに、先に無条件で明渡しや登記だけを求められた場合は、決済条件を確認する必要があります。実際の決済では、代金、鍵の引渡し、移転登記書類、抵当権抹消書類、固定資産税等の精算を同時に処理することが一般的です。
明渡しにより生活に著しい困難が生じるおそれがあり、建替え決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないと認められる顕著な事情がある場合、裁判所が1年を超えない範囲で明渡期限を与える制度があります。自動的な猶予ではなく、要件の立証と申立てが必要です。
売渡請求の有効性を確認するポイント
売渡請求の金額に目が向きがちですが、最初に手続の有効性を確認します。建替え決議の無効、催告の不備、期間徒過などが問題になる場合、時価だけを交渉している間に重要な主張や証拠を失わないよう注意してください。
- 集会招集通知、議案の要領、事前説明会が法定手続に沿っているか
- 区分所有者数と議決権の集計、共有者・相続人・所在不明者の扱いが正しいか
- 建替え決議で設計概要、費用概算、費用分担、権利帰属の基準が定められているか
- 4分の3要件を使う場合、耐震性不足等の客観的事由を裏付ける資料があるか
- 催告が遅滞なく行われ、対象者と到達日が正しいか
- 回答内容と到達日が正しく評価されているか
- 売渡請求者が参加者、買受指定者、又は適法な再生組合に当たるか
- 売渡請求が法定期間内に到達し、対象権利が特定されているか
- 決議後の建替え計画が大きく変更されていないか
決議後の大幅な計画変更も確認する
建替え決議後に、建物規模、用途、事業費、区分所有権の帰属方法などが大幅に変わると、当初の決議との同一性や追加の合意・決議が問題になることがあります。売渡請求の前提となった計画と、現在提示されている事業計画・権利変換計画を比較してください。
一方、建替え事業では、決議後に設計や費用が具体化されることも予定されています。変更があるというだけで直ちに無効とはいえないため、変更の程度、理由、決議事項との関係、区分所有者への説明経過を確認します。
売渡請求の時価は通常の中古マンション価格だけではない
売渡請求における時価は、売渡請求が行使された時点において、建替えが予定されていることを前提とした区分所有権・敷地利用権の客観的な取引価格として検討されます。老朽化した現存住戸を通常の中古物件として査定した価格だけで決めるものではありません。
建替えによって敷地の利用効率や新築マンションの価値が高まる場合、その経済的価値をどのように反映するかが大きな争点です。他方で、将来の新築販売総額だけを見て、その一部をそのまま請求できるわけでもありません。建築費、解体費、設計・販売・金融等の事業費や事業リスクを控除し、各住戸へ配分します。
| 主な算定アプローチ | 考え方 | 争点になりやすい項目 |
|---|---|---|
| 再建後価値から事業費を控除する方法 | 再建マンションと敷地利用権の価額から、建替えに必要な費用を控除する | 新築販売価格、容積・戸数、建築費、解体費、設計費、販売費、金利、利益・リスク |
| 建替え予定敷地の更地価額から取壊費用を控除する方法 | 再建建物の敷地として予定された土地の価額から、現存建物の取壊費用を控除する | 取引事例、地域・規模補正、建替え計画による利用制約、解体費 |
| 各住戸への配分 | マンション全体の価額に、対象住戸の配分率を乗じる | 敷地権割合、専有面積、階層、方位、位置、用途、店舗等の個別効用 |
東京高裁平成16年7月14日判決が示した考え方
東京高裁平成16年7月14日判決は、建替え後の建物・敷地利用権の価額から建替え費用を控除する方法と、建替え予定敷地の更地価額から取壊費用を控除する方法を具体的に算出し、両者を比較したうえで、個別事情も加味して時価を総合判断する考え方を示しました。
この判断から、相手方の鑑定書が一つの方式だけを採用している場合や、計画上の数値を無条件に使っている場合は、他の方式との比較、事業費の合理性、個別配分の妥当性を確認する必要があることが分かります。
東京地裁平成27年1月26日判決では鑑定額に大きな差があった
東京地裁平成27年1月26日判決では、再生組合側が約2763万円、区分所有者側が5630万円と主張する中、裁判所は土地価額、取壊費用、配分率などを検討し、時価を3360万円と認定しました。鑑定書があればその金額がそのまま採用されるわけではなく、基礎数値と評価過程が検証されます。
重要なのは、土地単価、建付減価、建築費、解体費、販売価格、事業利益、配分率など、差額を生んでいる前提です。反対鑑定を依頼する場合も、相手方評価のどこを修正するのかを明確にしてください。
不動産鑑定で確認すべき資料と数字
売渡請求の時価を検証するには、住戸の登記事項証明書や一般的な査定書だけでは足りないことがあります。建替え計画全体の収支と、対象住戸への配分を確認できる資料が必要です。
| 資料 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 集会招集通知・議案書・議事録 | 建替え計画、決議事項、賛否、費用分担、権利帰属の基準 |
| 基本設計・各階平面図・面積表 | 再建後の戸数、用途、容積、専有面積、保留床、店舗等の構成 |
| 事業収支・資金計画 | 販売収入、建築費、解体費、設計費、補償・仮住居関連費、金利、予備費、事業利益 |
| 不動産鑑定評価書・価格調査書 | 価格時点、評価条件、採用方式、取引事例、還元・開発前提、配分率 |
| 土地の資料 | 登記、測量、用途地域、容積率、接道、借地・底地、隣接地取込み、土壌等の制約 |
| 対象住戸の資料 | 専有面積、敷地権割合、階層、方位、用途、店舗収益、増改築、抵当権、賃貸借 |
| 見積書・契約案 | 建築費・解体費等の数量と単価、発注時期、価格上昇、利益相反の有無 |
価格時点をそろえる
地価、建築費、新築販売価格は時間の経過で変動します。売渡請求時の時価を争うのに、数年前の建替え決議時や組合設立時の数字だけが使われている場合は、価格時点の調整が必要かを確認してください。
事業費を控除しすぎていないか
建替え後価値から控除する費用には、建築費や解体費だけでなく、設計・監理、販売、金融、予備費などが含まれることがあります。しかし、費目の必要性、金額、二重計上、事業協力者の利益、価格上昇リスクの置き方によって結果が変わります。
引越費用や仮住居費については、当然に時価から不参加者の負担として控除できるとは限りません。他方、売渡代金とは別に常に全額が上乗せ補償されるとも限らないため、事業収支上の扱いと、個別の合意条件を分けて確認します。
配分率が対象住戸の価値を反映しているか
敷地権割合や専有面積だけで配分すると、階層、方位、角住戸、店舗用途、専用庭などの効用差が反映されない場合があります。規約、従前評価基準、過去の売買事例、賃料収益などから、対象住戸の個別性を検討してください。
売渡請求を受けた直後に行うこと
- 届いた書面と封筒を保存する:催告書、回答書、売渡請求書、配達記録、説明会資料、議案書を時系列順に保管します。
- 期限表を作る:催告到達日、回答期限、回答到達日、売渡請求期間、訴状の送達日、答弁書期限を一覧化します。
- 不用意な署名・明渡しを避ける:提示額の受領、権利放棄、清算、明渡日、登記委任などを含む書面は、効果を確認してから署名します。
- 時価の算定根拠を請求する:鑑定評価書、事業収支、建築・解体費、土地価格、配分率、価格時点の説明を求めます。
- 権利関係を整理する:共有者、相続人、抵当権者、賃借人、配偶者居住権等の関係者と必要な手続を確認します。
- 居住・事業の移転計画を並行して検討する:争っても明渡しが当然に停止するとは限りません。代替住居、融資残高、学区、通院、店舗移転などの実務準備も行います。
登記識別情報、契約書、鑑定書、議事録、回答書などを提出するときは、提出先、日付、目的を記録し、原則として写しを残してください。
交渉では価格と決済条件を分けて整理する
売渡請求の交渉では、時価だけでなく、決済日、明渡日、残置物、修繕・原状回復、登記、抵当権抹消、賃借人対応、税・管理費等の精算を整理します。価格に合意しても、決済条件が曖昧だと転居やローン返済に支障が生じます。
反対鑑定や意見書を提出するときは、「希望額」を示すだけでなく、相手方評価との差額表を作成します。例えば、土地価格、建付減価、解体費、建築費、販売単価、配分率を横並びにし、資料で修正根拠を示すと争点が明確になります。
訴訟では請求の有効性と時価が審理される
交渉で明渡し・登記に応じない場合、請求者から所有権移転登記や建物明渡しを求める訴訟が提起されることがあります。区分所有者側は、売渡請求の有効性、時価、同時履行、明渡猶予などを主張し、必要に応じて不動産鑑定や専門家意見を提出します。
訴訟では提出時期も重要です。鑑定書や証拠の提出が遅れると、十分に審理されないおそれがあります。訴状が届いたら、答弁書期限だけでなく、鑑定に必要な資料の入手時期と意見書作成期間も逆算してください。
自宅居住・賃貸中・抵当権付きの場合の注意点
自宅として居住している場合
自宅利用であっても、問題となるのは区分所有権・敷地利用権の時価です。住み慣れた地域、学区、通院、介護などの事情は、時価そのものとは別に、明渡時期や期限許与、和解条件を検討する材料になります。
賃貸中の場合
区分所有者への売渡請求だけで、賃借人との賃貸借が当然に同じ条件で終了するとは限りません。改正法には建替え等に伴う賃貸借終了請求と補償の制度があります。所有者の売渡代金と、賃借人への補償・明渡しは別に整理してください。
通常の賃貸マンションで借主が大家から建替えを理由に退去を求められた場合は、本記事とは制度が異なります。賃貸マンション建替えの立退料と交渉を参照してください。
住宅ローン・抵当権が残っている場合
売渡代金を受け取っても、ローン残高が代金を上回る場合や、抵当権者が抹消に必要な条件を示す場合があります。決済前に金融機関へ連絡し、残高、繰上返済費用、抵当権抹消書類、代金の振込先を確認してください。
共有や相続未登記がある場合も、誰が代金を受け取り、誰が登記書類を提出するかが複雑になります。催告・請求の相手方が正しいかという有効性の問題にもつながるため、戸籍・遺産分割・登記を早めに確認します。
マンション建替えの売渡請求に関するよくある質問
売渡請求を拒否すれば住み続けられますか
有効な売渡請求は、承諾がなくても到達により法的効果が生じます。単に拒否するだけでは足りず、請求の有効性、時価、同時履行、明渡期限など、具体的な争点を法的手続で主張する必要があります。
参加と回答した後に建替えに反対できますか
参加回答をすると、建替え決議の内容により建替えを行う合意があったものと扱われます。後から自由に不参加へ変更できるとは限りません。参加条件、追加負担、権利変換を確認し、回答前に将来の選択肢を検討してください。
条件付きで参加と書けば権利を留保できますか
条件の内容によっては、期限時点で参加意思が確定していないとして、参加回答と認められないおそれがあります。建替え決議の効力を争う場合も、回答の法的効果を別に検討し、曖昧な文言を避けてください。
時価は固定資産税評価額や中古査定額で決まりますか
通常はそれだけでは決まりません。建替え計画を前提にした再建後価値、事業費、敷地価額、取壊費用、配分率、対象住戸の個別性を検討します。固定資産税評価額や中古査定額は、参考資料の一つにとどまります。
不動産鑑定を依頼すれば必ず増額しますか
必ず増額するわけではありません。鑑定の目的は、相手方の評価条件や基礎数値を検証し、合理的な時価を示すことです。費用対効果を考え、まず相手方鑑定の差額要因を特定してから依頼範囲を決めます。
代金を受け取る前に明け渡す必要がありますか
代金支払と明渡し・移転登記は原則として同時履行です。ただし、合意書、供託、弁済の提供、訴訟上の判断により具体的な処理が変わるため、鍵や登記書類を渡す前に決済条件を確認してください。
引越費用や仮住居費は売渡代金に上乗せされますか
当然に別途全額が上乗せされるとは限りません。一方、建替え後価値から不参加者の負担として安易に控除することにも問題があります。時価算定上の扱いと、移転・明渡しの合意条件を分けて検討してください。
時価に納得できなくても事業は止まりますか
価格に争いがあることだけで、建替え手続が当然に停止するとは限りません。時価を争う準備と、明渡し・移転の実務対応を並行し、停止や保全の必要性がある場合は早期に個別検討します。
まとめ
マンション建替えの売渡請求は、分譲マンションの区分所有者に対し、区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すよう求める法定手続です。通常の立退料交渉とは異なり、催告への回答期限と売渡請求の行使期間が厳格に定められ、有効な請求は承諾なしに法的効果を生じさせます。
- 催告と売渡請求の到達日を記録し、法定期間を計算する
- 参加・不参加の回答を曖昧な条件付きにしない
- 建替え決議、催告、請求者、期間、計画変更の有効性を確認する
- 時価は建替え計画を前提に、再建後価値・事業費・敷地価額・配分率から検証する
- 相手方鑑定との差を基礎数値ごとに分解し、必要な意見書・鑑定を準備する
- 代金、明渡し、登記、抵当権抹消を同時履行の決済条件として整理する
催告への回答、売渡請求への対応、鑑定書の作成にはそれぞれ時間がかかります。請求書が届いてから金額だけを交渉するのではなく、最初の書面から時系列と証拠を整理し、手続と評価を並行して検討してください。
坂尾陽弁護士
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