営業廃止補償は、公共事業や用地買収によって店舗・工場等を移転する際に、移転先で営業を再開することが通常できず、営業そのものを廃止せざるを得ない場合の補償です。一般に「廃業補償」と呼ばれることもあります。
ただし、事業者が実際に廃業すると決めたことや、現在と同じ条件の物件がすぐに見つからないことだけで、営業廃止補償になるわけではありません。法令、立地、設備、騒音・臭気、顧客基盤等の事情を踏まえ、社会通念上妥当な移転先がなく、営業の継続が通常不能であることを客観的に示す必要があります。
行政側から営業休止補償を提示された場合は、営業廃止補償の方が高額かどうかだけで判断せず、移転可能性、代替地の探索結果、許認可、設備移設、フランチャイズ契約、顧客・商圏、従業員への影響を整理し、廃止・休止・仮営業所・規模縮小の各案を比較することが重要です。
- 実際に廃業するだけでは、営業廃止補償の要件を満たすとは限りません
- 営業場所が限定される事情と、妥当な移転先がないことの両方を検討します
- 代替地を探した経過、許認可、設備条件、商圏等を資料で残すことが重要です
- 営業廃止補償と営業休止補償では、補償項目と計算の考え方が異なります
- 補償契約への署名前に類型と算定内訳を確認する必要があります
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

Contents
営業廃止補償とは
土地収用法88条は、土地等の収用又は使用により土地所有者や関係人が通常受ける営業上の損失を補償対象としています。営業廃止補償の具体的な内容は、土地収用法第88条の2の細目等を定める政令20条や、国・地方公共団体の公共用地補償基準等で整理されています。
政令上の中心的な要件は、土地等の収用又は使用に伴い、営業の継続が通常不能となると認められることです。営業者の主観的な希望ではなく、一般的・客観的に見て営業再開が可能かという観点から判断されます。
営業補償全体には、営業休止、仮営業所、営業規模縮小、営業廃止という複数の類型があります。各類型の全体像や固定的経費、収益減、得意先喪失等の計算は、公共事業・用地買収の営業補償で詳しく解説しています。
「廃業補償」という言葉は日常的に使われますが、公共用地補償の基準では「営業廃止の補償」と整理されています。本記事では、公共事業に伴う営業廃止補償を対象とします。
営業者が廃業を選んだかではなく、営業継続が通常可能かで判断する
高齢、後継者不足、赤字、事業意欲の低下等により、事業者自身が移転を機に廃業を選ぶことはあります。しかし、その公共事業がなくても廃業した可能性がある事情や、客観的には移転して営業を続けられる事情がある場合、営業廃止補償ではなく営業休止補償等が検討されます。
反対に、事業者が営業継続を希望していても、法令上の立地制限、特殊な物理条件、周辺環境との関係等から妥当な移転先を確保できず、通常の方法では再開できないと認められる場合は、営業廃止補償が問題になります。
営業廃止補償と営業休止補償の違い
営業廃止補償と営業休止補償の最大の違いは、移転後に営業を再開できることを前提とするかどうかです。実際の廃業という結果だけではなく、補償算定時に営業の再建が通常可能であったかを確認します。
| 比較項目 | 営業廃止補償 | 営業休止補償 |
|---|---|---|
| 基本的な前提 | 妥当な移転先がなく、営業継続が通常不能 | 移転のため一時休業し、移転後に再開できる |
| 補償の目的 | 営業廃止と転業に伴う通常損失を補う | 休業・移転・再開に伴う通常損失を補う |
| 主な項目 | 営業権等、資産等の売却損、労働関係損失、転業期間中の収益・所得等 | 固定的経費、休業手当、収益・所得減、得意先喪失、商品等の減損、移転広告費等 |
| 中心となる争点 | 移転不能性、代替地不存在、事業と廃止との因果関係 | 休業期間、固定費、認定収益、顧客喪失、移転工程 |
| 主な証拠 | 候補地探索、許認可、立地・設備条件、商圏、第三者の回答 | 工事工程、設備移設、会計・賃金資料、再開準備資料 |
営業廃止補償の方が常に高いとは限らない
営業廃止補償には営業権等や資産の売却損、転業期間中の収益・所得等が含まれ得ますが、すべての項目が当然に認められるわけではありません。営業権等の独立した取引慣習がない場合、営業権等の補償が認められないこともあります。
営業休止補償では、長い休業期間、特殊設備の移設、従業員の休業手当、固定的経費、得意先喪失等が積み上がることがあります。したがって、類型名だけで金額の大小を決めつけず、各案を同じ資料に基づいて試算する必要があります。
営業廃止補償は、補償額が大きくなりそうだから選択できる制度ではありません。営業継続が通常不能であるという要件を、客観的な事情と資料で満たす必要があります。
営業廃止補償の認定要件
国土交通省の公共用地補償基準の運用方針は、営業所・店舗等が一定の類型に該当し、かつ、個別事情を調査したうえで、社会通念上妥当な移転先がないと認められる場合を、通常営業の継続が不能となる場合として整理しています。
したがって、認定では、概ね次の二段階を検討します。
- 営業場所が限定される事情があるか:法令、立地、物理的条件、社会的条件、地域顧客との密着性等を確認します。
- 社会通念上妥当な移転先がないか:候補地を現実に探索し、各候補で営業できない理由を個別に確認します。
法令等により営業場所が限定又は制限される営業
許可・免許、用途地域、立地規制、学校・病院等との距離、衛生・消防・環境上の基準などにより、営業できる場所が限定される業種があります。現在の許可を移転先へ当然に引き継げるとは限らないため、所管行政庁への照会内容と回答を残します。
特定地に密着した有名店
店舗の名称、歴史、商品、景観、観光地との結びつきなどから、営業価値が特定の場所と不可分である場合です。単に長年営業している、固定客がいるというだけでなく、移転によって営業の同一性や主要な顧客基盤が失われる程度を示す必要があります。
物理的条件により営業場所が限定される営業
公有水面の占用を必要とする営業のほか、大型機械、重量物、危険物、特殊な電力・給排水、車両動線、岸壁・線路への接続、広いヤード等を必要とする営業が考えられます。設備を分解・移設できるか、代替設備で機能を回復できるかも検討します。
騒音・振動・臭気等の社会的条件により場所が限定される営業
工場、資材置場、廃棄物関係、深夜操業等では、用途地域上は可能でも、周辺住宅、搬出入経路、騒音・振動・臭気、近隣同意等との関係で、現実的な移転先が限られることがあります。法令上可能というだけで、妥当な移転先があるとは限りません。
生活共同体を営業基盤とする店舗等
地域住民との継続的な関係を営業基盤とし、生活共同体の外へ移転すると顧客確保が特に困難となる店舗等です。顧客住所、来店範囲、紹介経路、地域行事との関係、売上構成などから、地域との密着性を示します。
上記の事情があっても、個別事情を踏まえて妥当な移転先を確保できるのであれば、営業廃止補償ではなく営業休止補償や仮営業所補償等が検討されます。
移転不能性を判断する具体的なポイント
営業廃止補償の交渉では、「移転先がない」という抽象的な主張を、確認可能な判断要素へ分解することが重要です。
- 法令・許認可:候補地で必要な許可を取得できるか、許可条件や申請期間はどうか
- 敷地・建物:必要面積、間口、天井高、床荷重、耐火性能、駐車場、搬出入動線を満たすか
- 設備・インフラ:電力、ガス、給排水、排気、冷却、通信、特殊基礎等を確保できるか
- 周辺環境:騒音、振動、臭気、交通量、深夜操業等を周辺との関係で許容できるか
- 商圏・顧客:主要顧客が移転後も利用できるか、場所との結びつきがどの程度強いか
- 契約関係:賃貸人、フランチャイザー、取引先等の承諾を現実に得られるか
- 費用と期間:通常の補償と合理的な事業計画の範囲で、移転・再開が可能か
同一条件の物件がないことと、妥当な移転先がないことは異なる
現在地と面積、賃料、駅距離、築年数、内装等が完全に同じ物件は通常見つかりません。判断の対象は、従前営業の機能を通常の範囲で回復できる妥当な移転先があるかです。希望条件を過度に狭く設定した探索は、移転不能性の裏付けとして弱くなります。
フランチャイズ本部や取引先の承認が必要な場合
フランチャイズ契約、代理店契約、メーカー認定等により第三者の承認が必要な場合、その承認条件は重要な事情です。ただし、本部が現在の候補を承認しなかっただけで直ちに移転不能とはいえません。出店基準、候補地の検討数、承認しない具体的理由、他地域での出店可能性を資料化します。
年齢や健康状態は要件と金額を分けて考える
事業主が高齢であることや健康上の事情は、転業の困難性や補償期間を検討する事情になり得ます。一方、営業所自体が客観的に移転可能である場合、年齢だけで営業廃止補償の要件を満たすとは限りません。個人的事情と、営業の場所的・機能的な移転不能性を分けて整理します。
代替地がないことを証明する資料
営業廃止補償を主張する場合は、用地担当者から候補地を示される前に、自らも合理的な範囲で探索を行い、その過程を記録しておくことが重要です。後から「探したがなかった」と説明するだけでは、探索範囲や判断理由を確認できません。
| 資料 | 記録する内容 | 示せること |
|---|---|---|
| 不動産会社への依頼書・メール | 必要面積、賃料上限、用途、設備、地域、期限 | 合理的な条件で探索を依頼したこと |
| 候補物件一覧 | 所在地、面積、賃料、用途地域、設備、内見日 | 探索範囲と候補数 |
| 候補ごとの不適合理由 | 許認可不可、床荷重不足、近隣制約、搬入不可等 | 単なる好みではない具体的な障害 |
| 行政庁への照会・回答 | 許可の可否、条件、標準処理期間、必要工事 | 法令上・行政実務上の移転可能性 |
| 設備業者・建築士の意見 | 移設可否、必要面積、工期、費用、安全上の問題 | 物理的・技術的な移転可能性 |
| 顧客・商圏資料 | 顧客住所、来店経路、地域別売上、契約継続条件 | 場所との密着性と移転後の顧客維持可能性 |
| 契約書・第三者回答 | フランチャイズ、仕入、賃貸借、認定条件 | 第三者承認や契約上の制約 |
候補物件ごとの比較表を作る
候補物件について、面積や賃料だけでなく、法令、許認可、設備、動線、商圏、工期、費用を同じ項目で比較すると、移転できない理由が伝わりやすくなります。拒否理由は「狭い」「遠い」ではなく、必要な機能と不足内容を数値や図面で示します。
探索の時期と回数を残す
候補地は時期によって入れ替わります。探索日、問い合わせ先、回答日、内見日、募集終了日を残し、一定期間継続して探したことを示します。行政側が提示した候補地についても、現地確認と具体的な適合性の検討を行います。
補償契約に署名した後で、当時の候補物件や担当者とのやり取りを再現することは困難です。メール、募集図面、照会回答、写真、見積書等は、交渉中から時系列で保存してください。
営業廃止補償で補償される主な項目と計算の考え方
営業廃止補償の要件を満たした場合でも、営業価値の全額や将来利益のすべてが補償されるわけではありません。営業補償調査算定要領等に基づき、通常生ずる損失を項目別に算定します。
| 主な補償項目 | 内容 | 確認資料 |
|---|---|---|
| 営業権等 | 資産とは独立して取引される慣習がある営業権等の正常な取引価格 | 取引事例、収益、自己資本、企業者報酬等 |
| 固定資産等の売却損 | 機械・器具・備品等の現在価格と現実の売却価格との差等 | 固定資産台帳、購入資料、査定、処分見積 |
| 商品・仕掛品等の売却損 | 費用価格と処分可能価格との差 | 在庫表、仕入資料、賞味期限・陳腐化資料、査定 |
| その他資本上の損失 | 契約解約の違約金、清算法人の費用等、廃止に通常伴う損失 | 契約書、解約見積、清算費用資料 |
| 労働に関する損失 | 解雇予告手当相当額、転業時に雇用を継続する場合の休業手当等 | 賃金台帳、雇用契約、従業員名簿、転業計画 |
| 転業期間中の収益・所得 | 新たな営業を始めるために通常必要な期間中の従前の収益又は所得 | 決算書、申告書、総勘定元帳、月次試算表 |
営業権等はすべての営業に認められるわけではない
営業権等の補償は、免許を受けた営業等の権利が、機械や商品等の資産とは独立して取引される慣習がある場合に問題となります。単に店舗に顧客がいる、長く営業しているというだけで、独立した営業権等の補償が当然に生じるわけではありません。
資産の売却損は新品価格全額とは限らない
営業廃止で使用しなくなる機械・備品等については、現在価格と現実に売却できる価格との差を基礎にします。既に償却が進んだ設備、他用途へ転用できる設備、他店舗で使用できる設備は、補償の有無や額が変わります。
転業期間と収益・所得の認定
国土交通省の運用方針では、転業に通常必要な期間中の従前の収益又は所得について、営業地の条件、営業内容、被補償者の個人的事情等を考慮し、一定の年数の範囲内で適正に定める考え方が示されています。ただし、各事業主体の基準、営業規模、転業計画、決算内容によって算定は異なります。
法人営業の収益又は個人営業の所得は、売上高そのものではなく、必要経費を控除した額を基礎とします。複数店舗を運営する法人では、対象店舗に帰属する売上・経費を合理的に区分できる資料が必要です。
従業員自身の離職者補償は事業主の補償と区別する
営業廃止により従業員が職を失う場合、要件を満たす従業員について離職者補償が問題になることがあります。事業主に対する解雇予告手当相当額等と、従業員本人に対する補償は、対象者と損失を分けて確認します。
営業廃止・休止・仮営業所・規模縮小を比較して試算する
営業廃止補償を主張する場合でも、行政側は、営業休止、仮営業所又は営業規模縮小で機能回復できないかを検討します。そこで、営業者側も複数案を比較し、なぜ営業廃止以外の案が妥当でないのかを説明できるようにします。
| 検討案 | 主に確認する前提 | 主な費目 |
|---|---|---|
| 営業廃止 | 妥当な移転先がない、営業継続が通常不能 | 営業権等、売却損、労働関係損失、転業期間中の収益等 |
| 営業休止 | 移転先で再開可能、休業期間を合理的に算定可能 | 固定費、休業手当、収益減、得意先喪失、商品減損等 |
| 仮営業所 | 仮営業が必要かつ相当、候補地があり費用比較が合理的 | 仮店舗費、二重移転、仮営業中の収益減・顧客喪失等 |
| 規模縮小 | 一部取得後も営業継続可能だが、面積・設備等を縮小 | 売却損、遊休化損失、経営効率低下等 |
主位案と予備案を準備する
営業廃止が認められるべきだと考える場合でも、予備的に営業休止案を作成し、必要な移転先取得期間、設計・工事、設備移設、許認可、開店準備を積み上げます。これにより、営業廃止が否定された場合でも、短すぎる休業期間や漏れている費目を争いやすくなります。
また、仮営業所を設置できるとされる場合は、仮店舗の賃料だけでなく、仮営業所の設置・撤去、二度の移転、機能低下、売上減、スタッフ・顧客への影響を比較します。単に「仮店舗がある」というだけでは、通常妥当な方法とは限りません。
営業廃止補償が認められにくい典型例
次の事情がある場合、営業廃止補償の主張が直ちに否定されるわけではありませんが、移転不能性や因果関係の説明が不足しやすいため注意が必要です。
- 実際に廃業したことだけを根拠にする:廃業の選択と、営業継続が通常不能であることは別問題です。
- 候補地をほとんど探していない:探索範囲、時期、条件、候補ごとの不適合理由が確認できません。
- 従前と完全に同じ条件だけを求める:通常の機能回復が可能な物件まで排除していると評価されるおそれがあります。
- 経営不振や後継者不足が主因である:公共事業と営業廃止との因果関係が争われます。
- 第三者の承認が得られないという口頭説明だけである:承認条件、交渉経過、他の候補の検討が必要です。
- 移転を前提とする発言・計画と矛盾する:交渉記録、事業計画、補助金申請等との整合性が問題になります。
- 補償契約後に初めて営業廃止を主張する:契約の効力や清算条項が障害となることがあります。
赤字でも営業廃止補償になるとは限らない
赤字は、営業を続ける経済的合理性や収益・所得の認定に影響しますが、営業場所の限定性や代替地の不存在を直接示すものではありません。また、公共事業前から継続的に赤字で廃業予定であった場合、公共事業によって通常生じた損失かが問題になります。
特殊設備があっても移設可能性を検討する
大型機械や特殊設備がある場合でも、分解移設、再築、設備更新、工程調整により営業を再開できることがあります。設備業者の意見、移設費、必要工期、安全性、新設との比較を確認し、単に「特殊だから移転できない」としないことが重要です。
営業廃止補償が否定された裁判例から分かること
大分地裁平成22年3月25日判決は、都市計画道路事業に伴って移転したコンビニエンスストアの営業者が、地方公共団体との補償契約後に、営業廃止補償との差額等を求めた事案です。
この事案では、営業者に営業休止補償として530万1300円、物件移転補償として68万1400円が支払われていました。営業者は、フランチャイズ契約や店舗の賃借関係、移転先確保の困難性等から営業廃止補償を主張しました。
裁判所は、任意の補償契約は私法上の契約であり、公序良俗違反、意思表示の瑕疵、優越的地位の濫用等の特段の事情がない限り、契約後に憲法29条3項を直接の根拠として不足額を請求することはできないと判断しました。
また、賃借型のコンビニエンスストアでは同様の条件の移転先を探すことが必ずしも容易でないとしながらも、営業の継続が通常不能であるとは認めませんでした。売上が県内店舗の中で高いという事情についても、他の場所で代替できないほど特別な店舗であるとは認められないとしました。
この裁判例から得られる実務上の教訓
- 移転先を探すのが難しいことと、社会通念上妥当な移転先がないことは区別されます
- フランチャイズや賃借関係があっても、移転不能性を具体的に立証する必要があります
- 高い売上や好立地だけでは、場所との不可分性が当然に認められるわけではありません
- 交渉中に移転を前提とした説明をしている場合、後の営業廃止主張との整合性が問題になります
- 補償契約後の追加請求は容易ではないため、類型と算定内訳は署名前に検討します
裁判例は個別事情に基づく判断です。法令・契約・商圏・候補地探索等により、営業継続が通常不能と認められる具体的事情があれば、結論が変わる可能性があります。
営業廃止補償を求める交渉の進め方
営業廃止補償の主張は、補償額が提示された後に始めるのではなく、営業調査と代替地探索の段階から準備します。
- 営業実態と権利関係を整理する:営業者、土地・建物・設備の所有者、賃貸借、フランチャイズ等を確認します。
- 営業に不可欠な条件を特定する:許認可、敷地、設備、動線、周辺環境、商圏等を数値化します。
- 合理的な範囲で代替地を探索する:不動産会社、行政、業界団体等を通じて候補地を調査します。
- 候補ごとの不適合理由を資料化する:行政回答、図面、見積、専門家意見、第三者回答をそろえます。
- 複数の補償案を試算する:営業廃止を主位案とし、休止・仮営業所・規模縮小の予備案も検討します。
- 提示内訳と前提を確認する:認定類型、対象資産、収益・所得、期間、従業員、在庫等を照合します。
- 契約条件を確認してから署名する:追加請求、未確定費用、移転期限、支払時期、清算条項を確認します。
任意交渉がまとまらない場合
任意の用地買収で合意できず、事業認定等を経て収用手続へ進む場合、収用委員会に営業補償の主張と証拠を提出することになります。手続の流れは、収用委員会の意見書・審理・裁決をご確認ください。
収用委員会の裁決後に補償額を争う場合は、土地収用法上の損失補償に関する訴えを検討します。出訴期間や当事者を誤ると、内容を審理されないおそれがあります。土地収用・用地買収の補償額の見直しと弁護士の役割も参考にしてください。
営業廃止補償を弁護士に相談するタイミング
営業廃止補償は、法律だけでなく、不動産、建築・設備、許認可、会計、労務、商圏分析が関係します。次のような場合は、補償契約に署名する前の相談を検討してください。
- 行政側から営業休止補償と説明されたが、移転先を確保できる見込みがない
- 許認可や用途地域の関係で、候補地で営業できるか判断できない
- 特殊設備・大型車両・騒音・臭気等のため、候補地が極めて限られる
- フランチャイズ本部や主要取引先の承認が移転の条件となっている
- 代替地探索を行っているが、どこまで探せば十分か分からない
- 営業廃止案と営業休止案の補償額・事業再建を比較したい
- 提示された営業権、売却損、転業期間、収益・所得の計算に疑問がある
- 契約書の清算条項や追加請求の扱いが不明である
弁護士は、営業廃止補償の法的要件を整理し、候補地探索資料、許認可照会、専門家意見、会計資料等を補償項目と対応させます。必要に応じて、税理士・公認会計士、補償コンサルタント、不動産鑑定士、建築士、設備業者、不動産会社等と連携し、反対試算、交渉、意見書、訴訟対応を行います。
都市計画道路等の事業全体の流れや、土地・建物・借家人補償との関係は、都市計画道路・道路拡張の立ち退き及び土地収用法・用地買収の補償と手続で確認できます。
営業廃止補償についてよくある質問
実際に廃業すれば営業廃止補償を受けられますか?
実際に廃業したことだけでは足りません。公共事業により、社会通念上妥当な移転先がなく、営業の継続が通常不能になったと客観的に認められる必要があります。経営不振、年齢、後継者不足等による自主的な廃業とは区別されます。
近所に同じ広さ・同じ賃料の物件がなければ移転不能ですか?
必ずしも移転不能とはいえません。従前と完全に同じ物件ではなく、通常の範囲で営業機能を回復できる妥当な移転先があるかを検討します。必要面積、許認可、設備、動線、商圏等の不可欠な条件を明確にしてください。
コンビニや飲食店でも営業廃止補償の対象になりますか?
業種だけで一律に決まりません。フランチャイズ承認、衛生・消防規制、厨房・排気設備、駐車場、商圏、地域との密着性、候補地探索等の個別事情から判断します。一般に移転可能な店舗であれば、営業休止補償が基本となることがあります。
事業主が高齢なら営業廃止補償になりますか?
高齢であることは転業の困難性や補償期間を検討する事情になり得ますが、それだけで営業継続が通常不能となるわけではありません。営業所の立地・設備・許認可等の客観的な移転可能性と分けて検討します。
営業廃止補償と営業休止補償はどちらが高額ですか?
一概にはいえません。営業廃止補償では営業権等、売却損、転業期間中の収益等が問題となり、営業休止補償では休業期間、固定費、従業員、顧客喪失等が問題になります。要件を満たす類型について、項目別に算定します。
代替地は行政が探してくれるのでしょうか?
事業主体から候補地情報が示されることはありますが、営業者自身も不動産会社等を通じて探索し、記録を残すことが重要です。行政が示した候補についても、許認可、設備、商圏等を具体的に検討してください。
補償契約を締結した後でも営業廃止補償を追加請求できますか?
契約内容、清算条項、意思表示の瑕疵、行政側の説明、契約後に判明した事情等によりますが、契約後の追加請求は容易ではありません。営業廃止と営業休止の類型、候補地探索、算定内訳、未確定費用は、署名前に確認することが重要です。
営業廃止補償の協議がまとまらない場合はどうなりますか?
任意交渉で合意できず、土地収用法上の手続に進む場合は、収用委員会で補償額等が裁決されます。裁決後に補償額を争う訴訟には期限があるため、裁決書の送達日と主張・証拠を早めに確認してください。
まとめ|営業廃止補償は移転不能性を契約前に証拠化する
営業廃止補償は、公共事業によって営業者が実際に廃業したかではなく、社会通念上妥当な移転先がなく、営業の継続が通常不能であるかを中心に判断されます。
- 営業廃止補償は、事業者が自由に選べる補償類型ではありません
- 法令・立地・設備・社会的条件等と、代替地不存在の両面を確認します
- 候補地探索、行政照会、設備意見、商圏資料、第三者回答を時系列で残します
- 営業権等、資産売却損、労働関係損失、転業期間中の収益等を項目別に算定します
- 営業廃止が否定された場合に備え、営業休止等の予備試算も準備します
- 補償契約後の追加請求は容易でないため、署名前の確認が重要です
用地担当者から営業休止補償を提示されたものの移転先が見つからない場合は、まず営業に不可欠な条件を一覧化し、候補地ごとの不適合理由を資料で整理してください。そのうえで、営業廃止・休止・仮営業所・規模縮小の各案と補償内訳を比較します。
坂尾陽弁護士
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