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ホテルオークラvs久兵衛/提訴の背景には何があった?TV出演弁護士が徹底解説

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ホテルオークラvs久兵衛/提訴の背景には何があった?TV出演弁護士が徹底解説

ホテルオークラが老舗すし店「久兵衛」からホテルオークラ東京の建て替えに伴うテナント場所を巡って約1000万円の損害賠償を求める訴訟を起こされました。久兵衛側は、ホテル建替えに伴って「メインエリア」から「アーケード街の片隅」に追いやられ「高級飲食店の格を著しくおとしめた」と主張したのに対し、ホテルオークラ側は請求棄却を求めました。

しかし、報道されていない背景事情も…!

ネットにおいては、久兵衛側が老舗ということに胡坐を欠いて無茶な主張をしている、提訴自体が格を貶めるという意見もあるようです。しかし、久兵衛側が提訴に踏み切ったのには様々な経緯があるようです。

TV出演弁護士が徹底解説

この記事では、ホテルオークラが久兵衛から訴えられるに至った背景事情や、今後の裁判の見通し等を徹底解説します。アイシア法律事務所の弁護士・坂尾陽は、2018年11月14日18時20分頃からフジテレビ「プライムニュース イブニング」において、本事案についてコメントしました。

ホテルオークラvs久兵衛の事案でTV出演を果たした弁護士が、本件の背景や今後の見通しについて徹底的に解説します。

【本記事の執筆者】弁護士 坂尾陽(第二東京弁護士会所属)
2005年 京都大学法学部卒業

2009年 京都大学法科大学院修了

2011年 司法試験合格

2012年 森・濱田松本法律事務所入所

2016年 アイシア法律事務所設立

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1. 事案の概要

報道されている事案の概要としては、ホテルオークラ東京建替えに伴って、アーケード街を出店場所として指定された老舗すし店「久兵衛」が、ホテルオークラに対し、信用を傷つけられたとして1000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたというものです。

しかし、訴状によれば久兵衛が提訴に踏み切った背景には様々な事情があるようです。訴訟を起こすこと自体が老舗の格を貶めるという指摘もありますが、久兵衛側としては訴訟提起をせざるを得ない事態に追いやられたという事情があるのかもしれません。

以下では、久兵衛側が作成した訴状に基づいて解説をします。訴状は久兵衛側の言い分が記載されたものであり、今後はホテルオークラ側の反論が予想されます。訴状記載の事実のうち争われる可能性が少ないだろう事実を前提とし記事を執筆していますが、あくまで久兵衛側が作成した訴状を前提としている点についてはご注意ください。

補足:ホテルのアーケード街って?

ちなみに、久兵衛はアーケード街の片隅は高級飲食店に相応しくないと主張していますが、ホテルのアーケード街ってそもそもどういう位置づけなのでしょうか?

この点に関して、久兵衛が提出した訴状においては、都内を中心に15のホテルをピックアップし、アーケード街のある帝国ホテル、シェラトン都ホテル東京、パレスホテル、ヒルトン東京、ホテルニューオータニ等のテナントを分析しています。これによれば、一般的にホテルのアーケード街は、レストランと離れた立地であり、専ら物販店舗やサロンがテナントとなるようです。

ホテルの目玉となるような高級飲食店がアーケード街に出店することは異例の事態と言えるのかもしれません。

2. ホテルオークラと久兵衛は2回も裁判をしていた!?

実は、本件事案において久兵衛はいきなりホテルオークラを訴えたのではなく、ホテルオークラと久兵衛の間は既にホテルオークラ東京の建て替えを巡って既に2回の裁判手続きがなされていたようです。

2.-(1)     妨害禁止仮処分事件

ホテルオークラと久兵衛の紛争は4年前から

ホテルオークラ東京の建て替えを巡って、ホテルオークラと久兵衛の間で交渉が最初になされたのは平成26年10月頃のようです。本件事案は、平成30年11月12日に第一回口頭弁論が開かれていますが、遠因を辿るとホテルオークラと久兵衛は約4年間も揉めていたことになります。

一旦は和解成立

妨害禁止仮処分事件に至った経緯は両当事者で争いが生じると思われるため割愛しますが、結論的にはホテルオークラと久兵衛は、久兵衛は旧本館から退去して別館で営業を継続すること、ホテルオークラ東京の新本館完成後は久兵衛が新本館に移転することを合意する旨の和解が成立したようです。

2.-(2)     なぜ久兵衛は新本館の場所を指定しなかったのか?

上記和解において、なぜ久兵衛は新本館の場所を指定しなかったのでしょうか。建替え中に交渉をするべきではなかったのか、場所が気に入らなければ撤退すれば良い等の意見もあり得るところかと思います。

この点に関して、久兵衛側は、「ホテルオークラ側が新本館の設計が未了であることを理由として新本館での具体的立地条件は協議できないとした」と主張しているようです。和解条件として、新本館の具体的立地条件を指定することについてホテルオークラ側が新本館の設計未了を理由として拒否したため、具体的立地条件を和解時に定めることができなかったということのようです。

その上で和解条項としては、「新本館における…具体的位置、容席数…の具体的内容等については、双方協議の上、別途検討する。」旨が合意されたようです。また、新本館における具体的立地条件は決まらなかったものの、久兵衛がホテルオークラに支払う賃料は従前と同様に売上の20%とされていました。

ホテルオークラと久兵衛の和解内容(まとめ)

久兵衛は旧本館を退去して別館で営業を続ける

新本館が出来た後に久兵衛は新本館に移転する

新本館の具体的内容等は協議の上で検討する

賃料は従前と同様に売上の20%

2.-(3)     その後どうなったかは争いの余地あり

ホテルオークラvs久兵衛の紛争は、上記和解をもって一旦終了しました。その後にホテルオークラと久兵衛の間で新本館の移転についてどのような話し合いが行われたのか、又は行われなかったのかは分かりません。

しかし、最終的に、ホテルオークラ側が新本館のアーケード街を久兵衛に提示し、久兵衛側がこれに応じなかったことは間違いありません。ホテルオークラが久兵衛に対して新本館における出店場所としてアーケード街を提示した後も様々な交渉や折衝がなされたことは想像に難くありません。

2.-(4)     二度目の仮処分事件の申立て/裁判官の見解は?

そのため、久兵衛はホテルオークラが指定する出店場所以外の出店提案を求めて、おそらく今年に入ってから二度目の仮処分事件の申立てを行います。

裁判官:ホテルオークラ側の指定場所を前提に金銭的解決を

この仮処分事件の申立てにおいても、裁判官から和解の打診があったようですが、ホテルオークラ側との間で和解が成立することはありませんでした。この事件において、久兵衛の主張によれば、裁判官から現実的な対応としてはホテルオークラ側の指定場所を前提として、損害賠償その他の金銭問題として解決せざるを得ないのではないかとの考えが示されたことから、仮処分事件を取り下げて訴訟提起に至ったとのようです。

2.-(5)     ホテルオークラと久兵衛の紛争背景まとめ

久兵衛の主張によれば、(i)妨害禁止仮処分事件において新本館の出店場所を協議することを前提として和解したのに、ホテルオークラ側が協議をせずに一方的に出店場所を指定してきたこと、及び(ii)二度目の仮処分事件の申立てでは和解が成立せず、裁判官からホテルオークラ側の指定場所を前提に金銭解決を図らざるを得ないとの考えが示されたことから、損害賠償請求訴訟に踏み切ったということになると思います。

3. 久兵衛が訴訟を起こした狙いは?

3.-(1)     損害賠償約1000万円を本気で請求するつもりはない

久兵衛は、ホテルオークラに対して約1000万円の損害賠償を請求していますが、当該請求を本気で求めているとは思われません。ホテルオークラ東京における久兵衛の売上は、年間3億円~4億5000万円、ホテルオークラに対しては年間1億円~1億3000万円の賃料・手数料を支払っていたようであり、事業規模に比して約1000万円の請求金額はあまりにも少ないと思われるからです。

もし、本件で話し合いがこじれて久兵衛がホテルオークラ東京の新本館に入居しないことになった場合、和解条項にもよりますが、おそらくホテルオークラ別館からの久兵衛の立ち退き問題が生じる可能性があります。ホテルオークラが、久兵衛を強制的に立ち退かせることになった場合、和解において特段の条項等がない普通借家契約を前提とすると、立ち退き料として10億円前後が認められてもおかしくないと思われます。

久兵衛側の請求額1000万円は、本気で損害賠償を獲得するのではなく、あくまで久兵衛としてもホテルオークラ新本館で営業を継続することを望んでいることの証かと思います。

3.-(2)     出店場所ではなく、高額な賃料が問題

久兵衛が訴訟を提起したのは、ホテルオークラと久兵衛の話し合いでは決着がつかないため、裁判の場で和解による落としどころを探るためと思われます。もちろん久兵衛にとってベストなのは、従前と同様のメインエリアに移転することです。久兵衛にとって、ホテルオークラ東京の新本館メインエリアで営業できることが理想なのは間違いないでしょう。

久兵衛:立地を対象とする事件は取り下げた

しかし、実は訴状によれば久兵衛側は必ずしも出店場所にこだわってはいないようです。訴状において、二度目の仮処分事件の申立てを取り下げたことについて、「立地を対象とする」事件は取り下げたと言及しており、必ずしも立地に拘る意図ではないことが伺われます。

久兵衛の真の狙い・落としどころは、アーケード街での出店を前提として賃料の引き下げを図ることにあると思われます。久兵衛は、旧本館メインエリアで営業を行っていたときは「売上の20%」を賃料としていました。また、和解条項においても、新本館の指定場所は決まっていなかったものの、賃料は従前同様に「売上の20%」と定められていたようです。しかし、ホテルオークラの指定された出店場所はアーケード街でした。

賃料相場が4~5倍になってしまう!

久兵衛によれば、もし売上の20%のままであれば賃料の坪単価は月額約22万円~33万円との極めて高額なものになるのに対し、アーケード街であれば坪単価約6万円程度ということです(賃料相場に比べて4~5倍との主張になります。)。

久兵衛としては、新本館メインエリアで営業できると期待して「売上の20%」を和解条項としたのに、アーケード街でも「売上の20%」は高額すぎると考えているのでしょう。従って、久兵衛の真の狙いは、アーケード街に移転することは受け入れる代わりに、アーケード街に出店することを前提として賃料交渉をやり直すことにあるのではないでしょうか。

4. 坂尾陽弁護士の見解

4.-(1)     現時点で損害賠償が認められるかは疑問

久兵衛は信用を傷つけられたとして約1000万円の損害賠償を請求していますが、現時点で信用が傷つけられて久兵衛に損害が生じたと言えるかは疑問であり、当該請求が認められる可能性は高くないと思われます。

4.-(2)     ポイントは交渉過程

もっとも、久兵衛側が主張する通り、ホテルオークラ側が新本館の設計未了を理由に和解時に新本館の具体的立地を明記せずに、和解条項に定められた協議を行うことなく一方的に新本館の出店場所を指定したのであれば、和解条項に基づく義務違反が認められる可能性はあると思います。

そして、アーケード街に移転したために、久兵衛の売上が従前に比べて著しく落ち込む等の具体的な損害が生じた場合には、久兵衛からホテルオークラに対して損害賠償が認められる可能性もないではないと思われます。

テナントから商業施設に対する損害賠償については、商業施設側がテナントに商業施設の見通しが不振であることの情報提供をしなかったことを理由に約1億4000万円の損害賠償を認めたものがあります(大阪地裁平成20年3月18日判決)。上記判決は、本事案に直接あてはまるものではありませんが、商業施設の賃貸人と賃借人間の情報格差を理由に賃貸人に高度の説明義務を認めたとも考えられるところ、このような考え方によれば本件の具体的な交渉経緯等によってはホテルオークラ側に厳しい判断がなされる可能性もあると思います。

4.-(3)     今後の行く末が注目される

現段階では訴状における久兵衛側の主張が明らかになっただけでなく、今後はホテルオークラ側がどのような反論がなされるかが注目されます。もし、新本館出店について話し合いが決裂し、久兵衛がホテルオークラから撤退することになった場合は、今度は久兵衛のホテルオークラ東京別館の立ち退きを巡って紛争が再燃する可能性もあります。

不動産問題、とくに店舗・飲食店の立ち退き問題を取り扱う弁護士としては、本件事案は今後の動向が非常に気になるところです。

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