営業中にもかかわらず突然大家から立ち退きを求められて困っていませんか。店舗や飲食店の経営者様にとって、大家から一方的に立ち退きを要求されても立ち退きたくないと思うのは当然です。そこで、立ち退きは拒否できるものなのかや、立ち退きする場合でも立ち退き料は貰えるのかを解説します
1. 大家は一方的に立ち退きを要求できない
もしも大家が賃借人に対して自由に立ち退きを求めることができたら、賃借人としては安心して会社を運営したりお店を経営したりできません。賃借人を保護するため借地借家法が定められています。
1.-(1) 立ち退きの手続き
借地借家法は、大家は建物の賃借人に対して立ち退きを求める場合、まずは契約期間満了の6カ月〜1年前から賃借人に契約を更新しない旨の通知を出す必要があります。契約時に契約期間を定めていない場合は、大家が解約の申入れをしてから6カ月が経過したときに立ち退きをしなければなりません。
このように借地借家法においては、立ち退きを求められる賃借人保護のために立ち退きの手続きを定めています。
1.-(2) 正当事由がなければ立ち退きを拒否できる
立ち退きの手続きだけを見ると大家は事前に通知や申入れをすれば立ち退きを要求できるようにも思えます。しかし、大家が適法に通知や申入れをして立ち退きを求めるには正当事由がなければなりません。
例えば、「賃借人が気に入らないから」「その場所を借りたい人がいて今よりも高く貸せるから」などの理由で賃貸借契約を更新しない旨の通知をすることはできません。立ち退きを求められても正当事由がなければ、現在借りているお店から立ち退く必要はありません。
大家から正当事由なしで強引に立ち退きを求められたとしても賃借人が拒否した場合、裁判では正当事由なしでの立ち退きは認められないので大家側が勝つことはありません。
以上の通り、大家から正当事由がないのに一方的に立ち退きを求められても立ち退きを拒否することができます。建物や土地を借りて店舗や飲食店で営業している以上はその場所を使用する正当事由がすでにあるため、賃借人は基本的な立場は強いのです。
1.-(3) どのような場合に正当事由が認められるか
しかし、いくつかのケースでは賃貸人の正当事由が強いため、裁判所の判断によっては立ち退きが認められてしまうこともあります。
立ち退きを要求する正当事由は、借地借家法によって判断枠組みが決められています。たとえば、貸主と借主のどちらが建物あるいは土地の使用を必要としているかは大きなポイントです。もっとも、裁判例において貸主側が土地の使用を必要としているかは厳格に判断されます。例えば、その場所に「大家の子ども達を住まわせる」、「賃貸人が自身のビジネスを拡大するために隣接する土地から立ち退きを求める」場合は正当事由が認めらないと判断される傾向にあります。
2. 立ち退きを拒否できる事例
立ち退き料をどんなに貰えたとしても、その場所から移転したくない人もいるでしょう。立ち退きを徹底的に拒否した場合は大家から立ち退きを求める裁判を起こされます。
裁判をせずに大家が無断で建物を取り壊したり強制的に賃借人を追い出したりすることはできないのでご安心ください。徹底的に戦った場合は立ち退きを認めず引き続き賃借人が使用し続けて良いという判断がでることもあります。
例えば、大家が別のところに土地や建物を持っている場合には、大家が貸している土地や建物を自ら使用する必要性がなく、正当事由がないと判断される可能性が高いです。また、建物が老朽化しているといっても、大家自体が定期的にリフォームなどのメンテナンスを怠っていた場合には、老朽化が正当事由と認められなかった事例もあります。
3. 現実的には立ち退き料を請求して退去する
以上の通り原則として賃借人側は借地借家法で保護されるため一方的に立ち退きを求められても拒否できる可能性が高いと言えます。
3.-(1) 裁判で立ち退きが認められるリスク
しかし、大家の自己使用目的がいつも正当事由にならないとうわけではありません。また、大家側は立ち退き料を払うことで正当事由を補完することが可能です。裁判所は、大家から立ち退き料の支払申出でがあった場合は、立ち退き料を支払う代わりに賃借人が立ち退くべきと判断することがあります。
また、賃貸借に関する従前の経過も正当事由として考慮されます。例えば、典型的には賃借人が家賃の支払いをしていない場合は立ち退きが認められます。家賃の支払い以外にも建物の使用方法を巡って賃貸人と賃借人の間で信頼関係を損なうような契約違反行為があった場合にも、大家が立ち退きを求めることが可能です。建物や土地の利用状況が悪く、問題がある使用の仕方をしている場合も立ち退きの正当事由になります。また、建物自体の状況に問題があるケースも立ち退きを迫ることが可能です。建物が老朽化しており、どうしても建て替えあるいは大規模なリフォームなどをしなければならない場合、立ち退きの正当事由として認められます。
このように様々な事情から裁判を起こされると立ち退きが認められるリスクがあります。徹底的に立ち退きを拒否する場合は、賃借人側としてはこのようなリスクをどう判断するかがポイントになります。
3.-(2) 敗訴すると十分な立ち退き料が貰えない
一番重要な点としては、裁判で徹底抗戦をして敗訴すると十分な立ち退き料を貰えない可能性が高いことです。一般的に営業中の店舗や飲食店の立ち退き料は、弁護士が上手く交渉すれば賃料の数十か月から100か月もの高額な金額になります。しかし、裁判所の判断により立ち退きが認められてしまうと高額な立ち退き料を貰えない場合があります。
また、一般的に時間が経過すれば立ち退きが認められる可能性がどんどん高くなります。例えば、老朽化を理由として立ち退きを求められた場合、その時点で立ち退きが認められないとして、時間経過により老朽化の程度が進んだ場合は立ち退きを認められるリスクがあります。
3.-(3) ご依頼者の大半が立ち退きに応じる
私たちが店舗や飲食店の経営者様からご相談をいただくときでも最終的に立ち退き料を貰って立ち退きに応じるご依頼者様が大半です。徹底的に立ち退きを拒否してもどこかの段階では立ち退きに応じる必要があり、大家と揉めてその場所で営業をする精神的負担もあります。従って、私たちがアドバイスをさせていただくときは、できる限り立ち退き期間は延長するよう交渉するとしても、高額な立ち退き料を貰って立ち退きに応じる方が賢明ですと助言をさせていただいております。
4. 立ち退き料とは何か?
4.-(1) 賃借人が貰える立ち退き料の性質
立ち退き料は、大家から立ち退きを求められたときに、大家側の立ち退きが認められる正当事由の補完事情の性質があります。例えば、大家側に建物を使用する必要があるとしても、そこで店舗や飲食店を営業している賃借人側の方が建物使用の必要性が高ければそれだけでは正当事由が認められません。このような場合に、大家側が立ち退き料を支払うことで正当事由が認められるのです。
立ち退き料は補完要素と言っても、しかし、実際は立ち退き料なしで正当事由が認められるケースは少ないです。また、逆に大家側にまったく正当事由がなくても、賃借人が提示された立ち退き料に納得すれば立ち退きが成立するということもありえます。従って、立ち退き料は単なる補完事情ではなく、立ち退きが認められるか否かにの結論を大きく左右するものといえます。
4.-(2) 立ち退き料の相場
立ち退き料の金額は、借りている場所の大きさや設備投資等の個々のケースによって千差万別です。従って、例えば立ち退き料として一律に〇〇円と言った相場はありません。一般的には、月額賃料を基準として賃料の何か月分で算定するケースが多いです。例えば、賃料月額20万円の物件で立ち退き料が賃料2〜3年分程度であれば、およそ500〜700万円程度の立ち退き料という計算となります。
もっとも、立ち退き料は賃料の6か月分から100か月分に及ぶまで様々なケースがあります。大家側からは賃料6か月分程度の提示しかなされないことも少なくありません。立ち退き料の金額には大きな幅がありますが、これは個別具体的な事情によります。
4.-(3) 立ち退き料の金額に影響を与える事情
例えば、同等物件の賃料相場、設備投資・移転費用の金額、営業利益があることについての営業補償等の事情で適正な立ち退き料は大きく異なります。その他にも、長年その場所で経営しており、場所込みで親しまれているお店であれば移転後は固定客を失う恐れもあることから、どのくらい長くその場所で経営を続けていたか等の事情も立ち退き料に大きな影響を与えます。
さらに、大家側で建物使用の必要性が高く、裁判になった場合に立ち退きを要求する正当事由が認められる可能性が極めて高い場合には立ち退き料がほとんど貰えないこともあります。著しく老朽化した建物で取り壊しなどが必要となる場合、借り手側が立ち退き料を請求しても却下される可能性が高いです。これは、いくら何十年と同じ場所でお店を構えていたとしても同じです。
5. あなたの事案における適正な立ち退き料は?
立ち退き料の相場はありません!
当事務所は立ち退き料を請求する側の案件を数多く取り扱っています。その上で断言しますが、個別的な事情を聞かずに一般的な立ち退き料の相場というものは存在しません。インターネット上には数多くの記事がありますが、不正確な内容であったりあなたの事案に妥当しないことも少なくありません。
5.-(1) 適正な立ち退き料は個別事情による
存在するのは、あなたの事案における適正な立ち退き料の金額だけです。大家から契約を更新しないという通知とともに、立ち退き料の提示があったときに、あなたの事案で適正な立ち退き料と言えるかは個別的に事情を聞いてみないと分かりません。
5.-(2) 弁護士が交渉すれば立ち退き料は増額できる
何百万円という立ち退き料を提示されて立ち退くことに決めたとしても、提示額は適正な立ち退き料でない可能性があります。私たちのご依頼者様の事案では立ち退き交渉を弁護士が行えば立ち退き料を増額できるケースがほとんどです。
大切なのは、あなたが借りている場所や、あなたの事案の事情ではどのくらいの立ち退き料が適切なのかをあらかじめ知っておくことです。いきなり何百万円もの立ち退き料を提示されたら魅力的に感じるかもしれません。しかし、お店の移転によって今までのお客さんが離れてしまう恐れもありますし、いちから宣伝広告を始めなければならない苦労もあります。
大家からは即決しないと立ち退き料の提示を撤回すると言われることもありますが、必ず弁護士に相談してから判断した方が良いでしょう。立ち退きによってビジネスが傾くリスクもあるため、立ち退き料についてはじっくり検討する必要があります。
5.-(5) 弁護士の相談で立ち退き料の適正額を知る
立ち退き料の相場を一律に断言することはできません。従って、あなたの事案において適正な立ち退き料の金額をしるためには弁護士に相談をする必要があります。弁護士に相談をすれば、賃貸借契約書や経営状況等に基づいて、適切な立ち退き料の金額の助言を得ることができます。
立ち退きに応じるにせよ、徹底的に立ち退きを拒否するにせよ、そもそも立ち退きを拒否できるのか、立ち退き料の適正額をどれぐらいかを知っておくことは非常に重要です。立ち退きを求められた場合は弁護士に相談することを強くお勧めします。
事業用物件の立ち退き料請求に関する法律相談は0円!完全無料です。弁護士直通の電話による無料相談も行っております。法律相談は24時間365日受付中。まずは悩まずお気軽にお問合せください。
6. 立ち退くかどうかを決めるのはあなた自身
借地借家法によって守られている賃借人は、立ち退きを求められても拒否する権利を持っています。また、大家に立ち退きを迫るだけの正当事由があったとしても、場合によっては立ち退き料を補完事情としなければならない弱い理由のこともあります。
最終的に立ち退きをするか決めるのはあなた自身です。そして、立ち退き料を貰って立ち退くことを決めた場合は賃借人の権利をきちんと主張し、適切な額の立ち退き料を要求しましょう。
一般的に立ち退きをすべきかや立ち退き料の相場はありません。個別具体的な事情によりますし、最終的にあなたが方針を決める必要があります。しかし、あなたの事案について、立ち退きが認められるか、どの程度立ち退き料が貰えそうかは弁護士に相談をする必要があります。弁護士と相談をしながら、どのように対応するかを決定しましょう。
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